ネット民が騒ぐ変貌ぶり

 次に民放のドラマに登場したのは24年の『アンメット』へのゲスト出演で、患者の母親役で、今度は明らかにふくよかになって登場し、「え、誰?」とネット民は大騒ぎとなった。続く25年の「秘密」では少女趣味の衣装に身を包んだ殺人犯として、狂気を感じさせる演技を披露していた。

 そして今回の『ばけばけ』である。

 近年は1話だけの登板などが続いていたので、まさか半年スパンの朝ドラとは想像していなかったが、きちんと稽古やリハを重ね、収録していく朝ドラは、彼女の希望通りの現場なのだろう。

 そして主人公・トキ(高石あかり)の母親・フミ役として、たおやかで包容力のある女性を生き生きと演じているように見える。

 そもそも、若い頃は美人女優として名高く、中年になって体形が変わった女優はこれまでにも大勢いるし、それは人間だから避けられないことだ。ただ彼女たちは、もっと頻繁にメディアに出続けていて、徐々に変わっていったので、誰もあまり変化に気づかずにいた。しかし池脇は数年に一度顔を出すため、余計に視聴者に驚きを持たれたのかもしれない。

 けれど今回は、朝ドラという国民的枠で、現在の姿が日本全国に広く認知された。これからは、可愛らしい母親役として多くの声がかかるだろうし、そんな彼女の活躍を私も期待したい。

 けれども彼女のことだから、『ばけばけ』が終わったら、また少し期間を空けるのか…?

 まあ、今からそれを心配するよりは、ともかくは『ばけばけ』を堪能したい。まだ物語は始まったばかりなのだから。

古沢保。フリーライター、コラムニスト。'71年東京生まれ。『3年B組金八先生卒業アルバム』『オフィシャルガイドブック相棒』『ヤンキー母校に帰るノベライズ』『IQサプリシリーズ』など、テレビ関連書籍を多数手がけ、雑誌などにテレビコラムを執筆。テレビ番組制作にも携わる。好きな番組は地味にヒットする堅実派。街歩き関連の執筆も多く、著書に『風景印ミュージアム』など。歴史散歩の会も主宰している。