そんな住吉さんに、病院選びのコツを尋ねると、「むしろ、いまだに私が聞きたいくらいなんですよ」と苦笑。

信頼できる情報にたどり着くには

治療方法は日進月歩で進んでいるし、先生ごとにいろいろな考え方があって。身近に経験者がいないと、信頼できる情報にたどり着くのはすごく難しいんですよね

不妊治療に終止符を打ち、元気に前へと進む住吉美紀さん 撮影/大坪尚人(講談社写真映像部)
不妊治療に終止符を打ち、元気に前へと進む住吉美紀さん 撮影/大坪尚人(講談社写真映像部)
【写真】不妊治療をやめることを決断するも、前向きに“スキップ”する住吉さん

 また、肉体的な痛みももちろんだが、それにも増してつらいのが精神面。本の中では、産婦人科で「お手上げ」と言われたり、仕事の都合で午前中に通院できないことを医師から責められたことなどが記され、読んでいるこちらも悲しくなるほど。

 ご本人の苦しさは計り知れなかっただろう。だが、さらにつらかったのは「絶望が重なっていくことだった」と住吉さん。

失敗が続き、年はとっていくので確率は下がっていく。それなのに、赤ちゃんが欲しいという気持ちを止められない。授かるためなら何でもするのにと思っても、自分ではどうにもできない。絶望がどんどん重なることが、本当につらかったです

 月〜金はラジオの生放送、土曜はテレビの生放送で治療日程の自由が利かない。また、「話を聞いてくれる人を探すのがとても難しかった」と住吉さんは振り返る。

授かりものというくらいなので、相談しても直接的な解決には結びつかないですけれど。でも抱え込むのは本当につらいので、今、悩まれている方が身近に話せる人を見つけられたらいいなと。それだけでも少し気持ちは楽になると思います

 そして、重要なのが夫側の理解。住吉さんの場合は夫・Tさんがとても協力的だった。前述の理不尽な医師に対してクリニックに「これからはあの先生に当たらないようにお願いできませんか」と電話してくれるなど、思わずウルッとくるエピソードが本には書かれている。

 不妊治療の間にすれ違ってしまう夫婦も多いといわれるが、どうすれば夫の理解を得られるのだろうか。

一緒に治療を受ける場面もあるし、出費もあるし。日常生活でもスケジュールの調整が必要になるので、そのときに不満を漏らされると女性側の精神的負担も増してしまう。だからちゃんと話し合い、合意した上で踏み出すのが、絶対にいいと思うんです

 だが、性や生殖に関することは話しづらいという現実も。

生殖機能が落ちてきていることと向き合うのは、男女共にキツいですよね。老い、さらにその向こうに死を意識してしまうので、話し合いがうまくいかないケースもあるだろうと思います。それでもやはりパートナーの理解は不可欠だと思うので、無理なら結婚という形を見直すことすら必要かも。経験者としては、“ひとりで始めてみたら”とは言いづらいですね。寄り添ってくれた夫には、本当に感謝しています

 心の支えになっていたことを尋ねると、「思い出せないくらいしんどかったんですが……」と考え込みながらも、「ラジオの仕事にはとてもやりがいを感じていましたね」と。

ゲストの方のお話にワクワクしたり、リスナーからのメッセージで楽しい気持ちになったり。自分の悩みとはまったく違う内容でも、共感してつながれた感じがしてうれしかった。それが支えになっていたのかも