評論家に悪しざまに書かれ、メジャー媒体に堂々と掲載されたこともある。
「あのときはすごく頭にきましたね。男たちの酒場での話みたいなことを平気で書いて。女だというとナメられる。もう作品で闘うしかない。だから、生き残ろうと思いました」
会長はじめ委員はみなボランティア
その言葉どおり、第一線で活躍を続け、いくつものベストセラーを世に送り出してきた。2015年には長年の執筆活動が評価され、紫綬褒章を受章している。日本ペンクラブ入会は2017年のこと。
ペンクラブは「言論・表現の自由と平和を守り、世界の文学者と交流する」を趣旨とした団体で、会員はP会員(詩人・俳人)、E会員(随筆家、編集者)、N会員(小説家)らで構成される。理事会の投票で会長に選出され、会長はじめ委員はみなボランティアだと知った。
「驚きました。無償で働いていたんだと。交通費も出ないことがあるし、手弁当です。それでもみなさん真剣に打ち込んでいる。頭が下がりましたね」
運営は会員の会費によるが、昨今は高齢化の影響もあり会員数は右肩下がり。クラブの行く末を案じ、新会長としてまず改革に着手している。
「以前は入会には参考資料として著書2冊の送付をお願いしていましたが、やめて門戸を広げました。執行部も入れ替え、女性を半数に増やしています。やはり女性の声を聞いていかなければと思って」
会長の重要な責務が声明の発表だ。国際問題から表現活動にまつわる問題まで声明の内容は多岐にわたり、そこには会長のサインが記される。激動の時代ゆえ発表の機会は多く、そのたび矢面に立たされるも、「それはもう仕方がない」と腹をくくる。
ネット社会との付き合いもまた大きな課題の一つ。SNSの発展で編集者は表現に神経を尖らせ、NGワードは増加。同じ本でも電子書籍となると制限がより厳しい。
「電子だとそこだけが切り取られ、取り沙汰されることもある。本は時間のかかる芸術で、全部読んで初めて伝わることもあるのに」
題材選びにも配慮が求められる。例えば殺人の話にしても、虚構だからではすまされない、そんな風潮が見え隠れする。物書きに受難の時代だ。
「それでも私はなるべく突っ込みたい、切り込んでいきたい。やはり作家は書くべきだと思う。恐れているのは、書き手が縮こまってしまうこと。私たちは表現する仕事。検閲につながってはいけないし、それをいちばん懸念しています」
会長は1期2年で、現在3期目。その間も精力的に作品を発表してきた。執筆との両立は「すごく大変」と苦笑い。
「でもここで得られる知己もあるし、知らない世界を垣間見られるのは作家として面白い。会員もいろいろな方がいて、それもまた楽しいですね。近頃は女性作家委員会など各委員会の活動が活発になってきているけれど、あまり知られていない。もっとみなさんにアピールしていかなければと考えています。あと喫緊の課題は、会員の増加。特に若い人! 新会員、大歓迎です。ぜひお待ちしています」
取材・文/小野寺悦子











