介護の日々で出会うさまざまな人生模様
だが、時には寄り添うことで、思わぬハプニングに発展することも。
「脚の悪いおばあさんに『歩けるようになったら一緒にディズニーランドに行きたい』と言われたので約束したら、いつのまにか結婚の約束をしたことになっていて(笑)。ご家族の方から『母がそう言っているんですが……』と言われて焦ったことがあります」
こうした介護現場の日常は、さかまきさんにとってネタの宝庫でもある。しかし、無断で施設を抜け出す“離設”の人を追いかけたり、柔道黒帯のおじいさんに投げ飛ばされたり、5分おきに尿意を訴える方に付き合ったりするなど、大変なこともある。利用者が高齢者であるため、亡くなった方を見送る経験もしてきた。
「利用者さんにはいろいろな人がいます。元バンドマンだったり、フラメンコダンサーだったり、反社の人もいたりします。今のご自身の年齢を忘れて、心は働いていたり、子育てをしていた若い時代に戻っている方も多く、施設を旅行先や仕事場だと思って過ごしている方もいます。さまざまな人生の最後のページを見せてもらっている感じです。時には泥棒に間違えられることもありますが(笑)」
明るい介護のイメージが家族や本人の安心となる
さまざまな困難もアイデアで乗り切り、笑いのネタに昇華させ、SNSやライブで介護現場のリアルを伝えるさかまきさん。
「介護にはどうしても暗いイメージがつきまとうけれど、それを少しでも明るく変えたいと思っています。施設に入居することも悪くないと、本人や家族に思ってもらえれば、負担が軽くなる人も多いはずです。実際、家族だけで抱え込むのは大変です。元気だったころを知っているからこそ、できないことや忘れてしまうことに対し、イライラしたり、きつい言葉を吐いてしまって疲弊してしまうこともあると思います。仕事として他人だからこそできるというのもあるので、介護のプロを頼ってほしいですね」
さかまきさん自身、父親が要介護となり施設に入居するという体験をした。
「日頃はプロの介護の必要性を発信していても、実際に自分の家族のこととなると、『施設に入ってほしい』とはなかなか言えませんでした。結局、父が自ら入居を申し出てくれたのですが、だからこそ、社会全体で介護へのイメージが明るいほうへ変わっていくといいなと思っています」
介護は自分事である。家族も、自分自身も、年齢を重ねれば避けては通れない。だからこそ、元気なうちから、いつかの日について考えておきたい。そして、さかまきさんの話にあるように、その日常は決して暗く悲しいだけのものではないことも、心に留めておきたい。
<取材・文/小林賢恵>











