目次
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ー 喪失の悲嘆からの立ち直りをサポート
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ー グリーフが長引く人は専門的なサポートを
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ー グリーフから抜け出すためのセルフケア

「夫や妻、両親など大切な人が亡くなったことで気持ちがふさぎ、眠れなくなったり、食欲がなくなったりするのは当然のことですが、それが続いて健康状態を悪化させてしまう人がいます。そういった死別などの喪失体験からの立ち直りをサポートするのが、グリーフケアです」

 そう話すのは、グリーフケアを長年研究、普及させてきた坂口幸弘教授。

喪失の悲嘆からの立ち直りをサポート

※画像はイメージです
※画像はイメージです

「グリーフ」とは日本語で「悲嘆」を意味するが、「本来のグリーフ(grief)にはもっと広い意味がある」と坂口教授は言う。

「大切な人が亡くなると、怒りや自責の念など、悲嘆だけではなくさまざまな感情があふれ出てきます。また、家に引きこもったり、反対に必要以上に仕事にのめり込んだり、それらの感情が普段とは違う行動に表れることもあります。こうした感情の表出すべてを『グリーフ』と呼んでいます」(坂口教授、以下同)

悲しみを消す必要はない日常を取り戻すこと

 坂口教授は「悲嘆と死別の研究センター」のセンター長でもあり、家族などを亡くした遺族へのグリーフケアも実際に行っている。

「例えば、生まれたばかりの人の心を小さな丸いボールだとします。成長とともにこのボールは大きくなり、結婚や出産などでさらに大きくなる。ところが、ある日、夫が亡くなったとする。心のボールにヒビが入り、部分的に欠けてしまう。これを心の傷と考えます。その傷は、何かに打ち込んだりしても元に戻ることはないでしょう。

 ただ傷は残っても、心のボールをまた大きくしていく生活を取り戻せば、傷の比率は小さくなります。これが、悲しみと折り合いをつけることなのだと感じています」

 喪失の悲しみが消えないのは当然で、無理に心の傷を癒す必要はないという。以前の生活を取り戻し、日々を暮らしていくのが大切であり、悲しみを乗り越えることにつながるようだ。