グリーフが長引く人は専門的なサポートを

 グリーフケアは第三者が遺族に寄り添って支援するものだが、「大半の人は専門家の助けを借りず、自分で元の生活に戻っている」とのこと。

 死に直面しても深刻なグリーフに陥らないようにするには、どうしたらいいのか。

「例えば親の場合、介護をしっかりやれたとか、亡くなる前に希望をかなえてあげたとか、自分の中に悔いがないかどうかが、そのあとのグリーフの大きさに影響すると思います」

 坂口教授が強調するのは、悲しみの大きさや表れ方は人それぞれで、こうでなければならないなどの模範はないということだ。

「人目もはばからず泣く人もいれば、まったく涙が出ない人もいる。感情を出したほうがその後の回復が早いかもしれませんが、無理に泣くことはありません。涙が出る人のほうが、悲しみが大きいというわけではありません。

 悲しみよりも罪悪感や怒りのほうが強い場合もあるでしょう。あとからじわじわと悲しみが襲ってきて、お風呂場で思いっきり泣いたという話も聞いたことがあります」

 グリーフが特に深刻に表れるケースは、事件や災害、病気などの突然の死(喪失)に襲われたときが多いという。死別後、時間がたっても「何もやる気が起きない」「外に出たくない」「どんどんやせ細っていく」「眠れない」などの状態が続くときは、一人で抱えず、誰かと悲しみを分かち合う、または気を紛らわすことが大切のようだ。遺族の会や分かち合いの会などに参加するのもケアにつながると坂口教授は言う。

「2019年に、“遷延性悲嘆症”という病気がWHOで新しく承認されました。死別から半年から1年以上、重篤なグリーフが続く場合に診断されます。うつと違って、抗うつ剤ではあまり効果がなく、治療法については今後の研究が待たれます」