柚希「わたるさんが私の“育ての親”」
湖月がトップスターのとき、柚希が同じ役を新人公演(※)で演じることも多かった。初めて湖月と同じ役を柚希が演じたのは'03年の『王家に捧ぐ歌』だった。
※本公演中に宝塚と東京で1回ずつ、歌劇団入団7年目までの生徒だけで本公演と同じ演目を上演する公演。
このときのことを2人に振り返ってもらうと─。
柚希 あのときはもう、わたるさんが“太陽”すぎて……。
湖月 太陽って何?
柚希 まさにエジプトの将軍のラダメスで、直視できないくらいに眩しかったんですよ。専科から星組に戻られて初めての作品で、組で兵士を演じていた組子たちみんなが、わたるさんから声をかけてもらえるだけで涙が出るくらいうれしくて。
湖月 そんな(笑)。
柚希 いえ、本当ですよ。私、初めての新人公演で同じラダメスを演じさせていただきましたが、本当に何もできなくて。作中でラダメスが将軍になったときに“うおぉっー!”と叫ぶんですけど、それすら恥ずかしくて……。
湖月 そうだったの?
柚希 お芝居に対して、まだ何もかもが恥ずかしくて。1つ下の下級生がやってくれて“私もやったんだからやってみてください”なんて言われながら、何度も劇場のロビーで練習して、やっと稽古場に行けるくらいでした。
湖月 そんなふうには見えなかったけどね。
柚希 本当に、やっと舞台に立てたというレベルでしたね。今思えば、そんなこと言ってないでやらないと、という感じなんですけど。
湖月 あのとき、私は主役として星組に戻ってきて、将来有望なちえが私の役をやってくれる。しかもそれが初主演だということで、何をしてあげられるだろう、って思ってた。でも、その前の全国ツアーで一緒だったくらいでそんなにコミュニケーションも取れていない関係だったから、どこまで言ったら傷ついてしまうかもわからないじゃない。
そんな私に、まっすぐな目で“ここがわからないんです”って素直に来てくれて。何か愛おしいというか、親心が芽生えてきて、なんとかしてあげたいという気持ちになったことを覚えています。
柚希 いやいや、畏れ多いです(笑)。
湖月 今回の作品でも、同じ役を2人で回替わりで演じるけど、私、ちえに対して全然上級生だと思ってないんです。ちえは私のことを上級生だと立ててくれるけど、私はアーティストとして、俳優としてちえを尊敬しているし。だから同じ舞台に立つといっても、星組時代のように“学年”というものはないので、そういう上下関係を意識してないんですよ。
柚希 でも、やっぱり私はわたるさんに育てていただきましたし、永遠に尊敬する先輩なんですよ。だけど今、同じ舞台を作っていくということでは、わたるさんにおんぶに抱っこでは絶対にいいものが作れないと思います。
俳優同士として、そこはちゃんと2人で向き合っていかないとわたるさんもやりづらいと思うので、心をオープンにして助け合いながら取り組んでいこうと思っています。わたるさんが私の“育ての親”ということは変わりませんけど(笑)。











