由希絵さんの願い
現在のゆいなさんは、料理が好きで、洗濯もでき、LINEも使いこなす。そして自転車で中学校に通っている。
「最近はゆいながプロレスに夢中で、一緒に会場に行って応援したり、私も影響を受けています。夫は高校の同級生で、療育にも付き合い、私の感情の受け皿にもなってくれました。
長女にはつらい思いをさせたと思いますが、いまでは頼もしい相談相手。将来、支援学校の先生になりたいと言ってくれたときは涙が出るほどうれしかった。でも、最終的には自分の好きなことをしてほしいなと思っています」
家族のために「死にたい」と思った日々も、家族がいたからこそ乗り越えられた。
身内で楽しむ感覚で2022年から始めたインスタグラムも、やがて由希絵さんとゆいなさんの世界を広げた。投稿を続けるうちに共感や子育てへの相談の声が届くようになり、取材や講演会の依頼も増えた。
そしてこの夏、これまでの歩みや家族への思いをまとめた著書『どうにかなるっちゃ』も出版した。
「ありがたいことに、講演でいろいろな土地に行かせてもらい、ホテルに泊まったり、レストランで食事をしたり。そうした経験が、ゆいなの良い訓練にもなっています」
中学卒業後は支援学校に進む予定だが、由希絵さんは電車での通学を考えている。そして、いずれは自立して、ひとりで暮らせるようになってほしいと願っている。
その日まで、ゆいなさんと由希絵さんのトライ&エラーは続いていく。広がる世界の中で、ふたりはまた新しい一歩を踏み出そうとしている。
『どうにかなるっちゃ知的障がいのある自閉症児ゆいなの母の記録』(KADOKAWA)蓬郷由希絵さんの初著作となるエッセイ
取材・文/小林賢恵











