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ー 次世代ゲーム機戦争はソニーに軍配

 年末が近づき巷ではクリスマス商戦がさかんだ。各企業は“モノ”を売ろうと必死であり、新製品も投じられる。ゲーム機のことで言えば、1994年の年末には各社から“次世代ゲーム機”が続々リリースされた。

次世代ゲーム機戦争はソニーに軍配

 この世代のゲーム機の特徴は、従来のカートリッジから光ディスク(CD-ROM)を用いることで大容量のゲームを作ることが可能となり、複雑なシナリオやCG(コンピューターグラフィックス)の使用など表現の幅が広がった点にある。

「まず、11月22日にセガがセガサターンを発売しました。当時の定価は4万4800円。これは限定価格で半年後に4万9800円になると告知されていましたが、のちに撤回されます。その後、12月3日にソニーがプレイステーションをリリース。こちらの価格は3万9800円です。プレステの方が安価でしたが、当初はサターンの売れ行きが優勢でした。両社は激しい値下げ競争を繰り返し、最終的に半額以下にまでなります」(ゲームライター、以下同)

 その後、1998年3月にセガサターンは販売を終了し、“次世代ゲーム機”戦争はソニーに軍配があがる。

 一般的に“次世代ゲーム機”戦争はソニーのプレイステーションとセガサターンの間で繰り広げられたイメージが定着しているが、じつは“もう一つのゲーム機”が存在した。それが、NECホームエレクトロニクスからリリースされたPC-FXだった。

「PC-FXは、セガとソニーに遅れて12月23日に発売されます。価格は4万9800円と、もっとも高価でした。サターンやプレステと同じく、記録媒体に光ディスクを用いており、専用のアダプターを使用して、NECのパソコンであるPC-9801シリーズのCD-ROMドライブとしても使用可能でした。1995年3月にはPC-98シリーズで、PC-FXが利用できるアダプタやボードも発売されています」

 動画再生機能に秀でていた先鋭的な次世代ゲーム機だったが、PC-FXは売上が伸び悩み、1998年6月に撤退している。なぜPC-FXは売れなかったのか。大きな要因の一つとされているのが“キラーソフト”の不在だ。

キラーソフトとは、特定の家庭用ゲーム機の普及に貢献したソフトを指します。このゲーム機でしかプレイできない人気ゲームですね。サターンが好調だったのは、ゲームセンターの人気アーケード用格闘ゲームの『バーチャファイター』が遊べたためです。プレステもアーケード用レースゲームの『リッジレーサー』や人気RPGの『ファイナルファンタジー』シリーズのリリースが売上に大きく貢献しています。

 PC-FXの場合、動画がきれいに再生されるため美少女ゲームなどが一部で人気でしたが、爆発的なキラーソフトはありませんでした」

 PC-FXの最終的な売上台数は11万1千台。一方のセガサターンが575万台、プレイステーションが1885万台を売り上げているため“完敗”となってしまったが、1994年の年末に起きた次世代ゲーム機戦争に、PC-FXという“忘れられたゲーム機”があったことは間違いない。