一方、距離を置きたくても帰省せざるを得ないと考える人も。都内に住むBさん(40代)もその一人だ。

関係を断つようなことになるほうがお互いに不幸

「山形県で一人暮らしをしている75歳の母親は、週に何度も電話をしてきて、“あちこち痛いのに病院へ行けない”“一人で寂しい”“あなたが近くにいてくれたらよかったのに”と延々と愚痴を言ってきます。

 娘として申し訳ない気持ちはありますが、昔から母とは考え方が合わず、電話で話を聞いているだけでイライラすることも。それでもきちんと帰省して、将来的に介護はどうするか、家はどうするか、今のうちに話し合っておかなければと思っています

 老親の介護などについて話し合うため、帰省が必要と考えている場合はどうすればよいのか。

「親とうまくいっていないのに、介護など将来的な話をするのは時期尚早です。それよりは、自分の生活を優先し、心が快適なまま親とコミュニケーションを取れるようになることを目指しましょう。そうでなければ、我慢に我慢を重ねて介護をすることになってしまいます。

 実家への帰省は、親と自分がどういう関係を築きたいかを考えるきっかけ。負担と感じない帰省を計画できているか、親からの強引なお願いは無理せず断れているか、自分に問いかけてみてください

 帰省をして顔を見せることが親孝行ではない。

むしろ、我慢をし続けたあげく、関係を断つようなことになるほうがお互いに不幸です。たとえ今回は帰省をやめて親が悲しそうにしていても、これから先に穏やかな関係を続けていけるよう、心を尽くすことこそが愛情だと思います

取材・文/河端直子

石原加受子さん 心理カウンセラー。思考・感情・五感などをトータルに捉えた独自の心理学でカウンセリング。心が楽になる生き方を提案する。『「苦しい親子関係」から抜け出す方法』(あさ出版)など著書多数。