モデルの仕事を辞め演技を一から学び直し

 まなく大手芸能事務所に所属することになった彼女だが、ほとんどが俳優ではなくモデルの仕事だったという。

「事務所に所属して半年間はまったく仕事がなくて、状況を変えようとスタンドイン(※)も志願しました。広告に強い事務所だったこともあって、しばらくしてからモデルの仕事は入るようになったんですが…。そんなときに出会ったのが、『ラブトラ3』に一緒に参加したユウマくんでした」
※撮影本番前に、照明やカメラセッティングのために俳優の代役を務める仕事

“俳優を志しているのに、自分に来るのはモデルの仕事ばかりーー”。境遇が同じ2人はすぐに意気投合した。

周りから“俳優の道は諦めたほうがいい”と言われることも増えていって、ユウマくんとはお互い励まし合って頑張っていました。彼とお付き合いしたのは9か月間でしたが、最後は自然消滅みたいな形で終わってしまったんです。私は付き合ったら何年も続くタイプだったし、別れるときもLINEとか電話じゃなくて、ちゃんと顔と顔を合わせてしっかり話してお別れしてきました。だから、ユウマくんとの別れが私の中でどこか引っかかっていたんですよね」

 30歳という節目を前に、外山は俳優の仕事に振り切ることを決める。大学卒業からお世話になってきた事務所を辞め、退路を絶った。

モデルの仕事を辞めて、演技を一から学び直しました。週に3回くらい自分でも営業に行って、オーディションを受けさせてもらったり。でも、全然ダメでしたね」

 もう諦めよう。そう思っていたときに、ある映画の主演に抜擢される。現在公開中のオムニバス映画『Mothers』の一作『いつか、母を捨てる』だ。

「オーディション情報をXで見つけてすぐに応募しました。これまで秘書役だったり、憧れの先輩役だったりスマートな役を演じることが多かったのですが、本当はもっと人間の泥臭い部分だったり、がむしゃらに壁を乗り越える人間の美しさを演じたい気持ちがあったんです。だから、Xに書かれた作品情報を見て、すぐに“これだ!”って。合格の連絡をもらったときは、うれしさのあまり泣き崩れてしまいました」

 過干渉な母と共依存に陥る娘・晶子を演じた外山は、20分あまりの短い作品の中で、1人の女性が持つ「弱さ」「醜さ」「脆さ」「優しさ」「強さ」を巧みに演じ分ける。映画初主演とは思えない演技は高く評価され、2024年には和歌山県で行われたKisssh-Kissssssh映画祭で最優秀主演賞を受賞した。

「撮影現場に前乗りして、晶子が暮らす街を散策しました。彼女はどんなことを考えて、どんな気持ちで、この場所で生きているんだろうって想像して。監督からどんなリクエストがあっても応えられるように、いろんな晶子の姿をイメージしましたね」

『いつか、母を捨てる』は映画祭で高く評価され、2025年1月に作品が公開。『ラブトラ3』参加の話が来たのは、俳優・外山史織にとって大切な時期だった。

参加するかどうかはかなり迷いましたね。でも、彼も理由があって誘ってきたわけだから、それに応えずに断ってしまうのはいつか後悔するんじゃないかなって。これまでの恋愛と違って、ちゃんと話し合って別れたわけじゃないので、しっかり清算したいという気持ちがだんだん強くなったんです

 新しい恋よりも“恋の清算”を選んだのには、こんな思いもあった。

「自分の過去の経験や気持ちはどうしても演技に反映されてしまうし、恋愛もひとつひとつ大切にしなくちゃいけないと思うんです。相手のこともちゃんと理解したいし、私の気持ちも大事にしたい。そういう意味でも本当に参加してよかったと思うし、ユウマくんも最後にちゃんと話してくれたから、今ではすっかりいい友達です(笑)」

 公私にわたって目が離せません。

映画『Mothers』 2025年12月25日までCINEMA Chupki TABATAで公開中。