しかし、かつて兄のように慕った喜八監督の娘でも、仲代さんは容赦しなかった。
「無名塾は集団生活で、遅くまで稽古をし、内外での飲み会も多く、やりがいはありましたが大変でした。私は遠藤憲一さんと同期ですが、彼は入って数日で離脱したので入れ違いでした(笑)」
真実さんが抱いた仲代さんの印象は、母とは真逆だった。
ヘルメットにびっしり落書き
「無名塾での仲代さんは、いつも豪快に笑って、ずっとあれこれしゃべりっぱなし。イタズラ好きなところもあって、私の使っていた原動機付き自転車のヘルメットにビッシリ落書きをされたことも。
当時の仲代さんは黒澤明監督の『乱』の撮影中。過酷なロケでピリピリしていましたから、息抜きで私をからかったのかもしれません(苦笑)」
両家の交流は、2005年に喜八監督が亡くなった後も変わらず。2015年に、みね子さんの初監督作品となる八千草薫さんが主演の映画『ゆずり葉の頃』を撮った際も、仲代さんは二つ返事で出演を快諾。撮影場所として無名塾を貸し出すなど協力を惜しまなかった。
「父の喜八もそうでしたが、仲代さんは、どこまでも人と深く関わるのが好きな方でした。だから、役者も無名塾の塾長も最後まで続けられたのではないでしょうか」
人間と演技を愛し続けた仲代さん。
きっと今ごろ、天国で喜八監督と映画談議に花を咲かせているに違いない─。











