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ー 昨年選出の熊野那智大社によると…

 米国の有名雑誌『TIME』が発表した「世界で最も素晴らしい場所」に三重県伊勢市の伊勢神宮が選出された。4月7日に毎日新聞の公式Xアカウントがこのニュース記事を投稿したところ、引用リポストを中心に激しい議論が巻き起こっている。

昨年選出の熊野那智大社によると…

『TIME』誌は、伊勢神宮を「日本で最も重要な神社であり、控えめな建築の極み」と最大級の賛辞で紹介。式年遷宮や「お木曳」などの伝統行事にも触れ、世界へ向けて「訪れるべき場所」と太鼓判を押した。

 この快挙にSNS上では、

《誇らしい。伊勢神宮は一歩入ると空気が変わる。海外の人にもぜひ味わってほしい》

 という肯定的な意見も一部で見られたが、それを上回る勢いで噴出しているのが、「選んでほしくなかった」という拒絶の反応だ。

《あー、やめて。余計なことするなよ。神宮は日本人にとって聖域。無料で入れるテーマパークにされてたまるものか》
《大切な場所なんだから余計な報道をしないで。そもそも君らに良さなんて理解できない。観光公害が更に酷くなる》
《オーバーツーリズムで混雑してほしくない。入場制限を考える時期では。小便する輩や鳥居で懸垂するような連中を入れないで》

 こうした反発が相次ぐ背景には、単なる混雑への懸念だけでなく、信仰の場が“汚される”ことへの強い危機感があるという。

「欧米メディアの賞賛が、必ずしも現地に歓迎されるとは限りません。近年、日本の聖域や史跡では不敬な行為が相次いでいます。昨年12月には靖国神社の石柱に『Toilet』と落書きした中国籍の男に実刑判決が下されましたが、こうした事件の記憶も新しく、注目を浴びることで“第二の靖国”になりかねないと危惧する人は少なくないのです」(全国紙社会部記者、以下同)

 TIME誌は昨年も同じく「世界で最も素晴らしい場所」を発表しており、その際は和歌山県の熊野那智大社と青岸渡寺が選ばれたのだが、熊野那智大社の広報担当者はこう証言する。

「世界遺産に登録されて以来インバウンドのかたは多くいましたが、アメリカの雑誌に選ばれてさらにきていただけるようになった印象です。日本人よりインバウンドのほうが多い日もあるくらいです」

 世界的な名声と引き換えに、本来の姿が変容してしまうジレンマ。

「世界遺産や国際誌への選出を“地域活性化の特効薬”とする見方がある一方で、伊勢神宮を心の拠り所とする人々にとっては、静寂こそが守るべき価値。文化の理解が追いつかないまま観光客だけが増えれば、さらなる規制や有料化の議論を加速させることになるでしょう」

 世界に誇るべき場所が、世界から隠しておきたい場所になっていく。今回の「賛否両論」は、日本の観光政策が直面する課題を浮き彫りにしたといえるだろう。