こんにちは。浜木綿子でございます。最近うれしかったことは、やっぱり息子のこと。香川照之が主演を務めました『災 劇場版』が公開されて、国内外から高い評価をいただいており、異例のヒットと伺っております。
演じたかったけど、叶わなかった役は
4月にはフランスの映画祭で最高賞とグランプリの2つを受賞し、これから韓国と台湾でも上映されるようです。監督さんはじめ、みなさま、おめでとうございます。私もうれしいです。
私はこれまで、たくさんの作品に携わり、いろいろなお役を演じました。でも、私のほうから「この演目の、この役がやりたい」と、お願いしたことは一度もありません。
すべて与えてくださる役。ですから、ちょっと生意気ですが、お断りすることもありました。演じたかったけど、叶わなかった役は『マイ・フェア・レディ』の主人公、イライザです。
映画ではオードリー・ヘプバーンが演じましたね。日本でのミュージカル初演は、東京宝塚劇場が開幕した1963年。それより何年か前、私が宝塚在団のころ、カナダ・アメリカ公演がありました。
そのとき私はニューヨークで『マイ・フェア・レディ』を観劇して、素晴らしいミュージカルでしたので、レコードを買い求めました。数年後、そのレコードを劇作家の菊田一夫先生に聴いていただきたくて、お貸ししました。
いつか東宝で上演していただきたく……。もちろんイライザは私で……(スミマセン)。しばらくして先生が「アレ、やるよ」と、おっしゃるので「えっ!! うれしい!!」と、叫んでしまいました。
すると先生は「イライザは江利チエミさん。おまえさんは、まだ早い」って。「レコード返してください!!」……とは言えませんでした。
あと、やりたかったのは『道』。ジェルソミーナ役です。純真で、ちょっと稚拙なところがある女の子。ストーリーは、みなさんもご存じですよね。
悲劇的で感動的な、あの幕切れ。私は背が低いですし、髪形をおかっぱにして、無邪気で明るく、そして悲しく表現できたらと、ずっと思っていました。映画を何度も見て、DVDも買い求めましたが結局、東宝にも伝えられず、夢は儚く消えてしまいました。
日本の作品では、有吉佐和子さん原作の『芝櫻』で、芸者・蔦代役は何度も務めさせていただきましたが、ある日、有吉先生が楽屋にいらっしゃって「今度ネ、芝櫻の続編を書くけど、浜さん出ましょう!!」と言ってくださいました。
でも、その後お逢いできないまま、先生は天国に召されてしまいました。後に発売された『木瓜の花』が続編でしたのかしらね。だとしたら、お婆さんの役でした。
私は若いころに、お婆さん役を演じたことがありますが、難しかったですね。お婆さんを見つけては、立ち上がり方、歩き方、座り方を見て、たくさん学びました。中には笑い方がとっても面白いお婆さんがいました。
声を出す前に、口を開けるの(笑)。今の私が、お婆さんの役ならそのままでいいのですから、……上手だと思います(笑)。
いい出逢いがあって、まわりの人に恵まれて、本当に幸せです。厳しい流れもあったけど、それに立ち向かっていなければ、今の私はないと思います。選んだ道は間違っていなかったと信じています。
もし、魔法で夢が叶うなら、いろんな人にお逢いしたいですね。両親、48歳で亡くなった姉、お世話になった宝塚の先生方、菊田先生、宮川一郎先生などなど。私は今90歳になり、こんな生活をしていますって。
みなさんは、どんな夢をお持ちですか? 私ね、もしも今サッサッと歩けて、お酒もお食事もたくさんいただけるなら、もう一度ハワイに行きたい。行ってお買い物がしたい! 若いころのように水着で砂浜を歩きたい。
横に思い人がいたらもっとステキでしょうね。夢って、いくつになってもあるのですね。みなさんもいっぱい、ときめいてくださいね。では、またネ!
はま・ゆうこ/1935年、東京都生まれ。宝塚音楽学校卒業。'62年に文化庁芸術祭奨励賞、'73年にゴールデン・アロー賞、'89年に菊田一夫演劇大賞、'95年に橋田賞などを受賞。2000年に紫綬褒章、'14年に旭日小綬章を受章

















