愛子さまや佳子さまは、時代を変えていく存在であってほしい

 今回の皇室典範改正法案は、愛子天皇、それに続く女系天皇を徹底的に排除する改正案にしか見えません。「愛子天皇排除法案」と言ってもいいのではないでしょうか。

 改正案では、愛子さまには、住民基本台帳法が適用されることになっています。結婚した愛子さまは民間人と同じように住民登録をするということです。市区役所などで婚姻を届け出て、住民票が公布される対象となります。国民年金に加入しなければなりませんし、健康保険を利用するにはマイナンバーカードを持つことも想定されます。基本的には、皇居から出てもらい、民間の土地で暮らすことが想定されています。

 愛子さまには、年間3050万円の皇族費が支給されますが、夫や子には何の手当もありません。愛子さまの夫、生まれてきた子を皇族とせず、女系天皇の芽を摘むための施策です。国民と近い場所にいるのはいいかもしれませんが、愛子さまは、皇族としての仕事もしなければなりません。「二流」皇族扱いされるように思えます。女性皇族がいいように使われるような気がしませんか。

 これに対し、旧宮家から養子となった皇族については、妻や子供も皇族扱いです。養子皇族には3050万円、妻には1525万円、子供には305万円の皇族費(年間)が支給されます。愛子さまの家族とは格差がある扱いになります。最大のポイントは、養子皇族には皇位継承権はないものの、子が男子なら継承権が与えられることです。つまり、改正案は、基本的には、男系男子継承維持のために行われると言っていいでしょう。

愛子さまと佳子さまが公務に励まれる様子。一緒の公務の際には楽しそうに会話されることも多い
愛子さまと佳子さまが公務に励まれる様子。一緒の公務の際には楽しそうに会話されることも多い
【写真】6月25日、「黄色のセットアップ」を着用した愛子さまと、94年に同じものをお召しになっていた雅子さま

 問題なのは、女性皇族の住民基本台帳の問題にせよ、養子の子に継承権を与えることにせよ、これまで議論がほとんどなかったこと。過去2年間、衆参両院の全会派による全体会議で議論を続けてきましたが、こうした問題は議題にあがっていません。決定の土壇場になり、政府自民党が改正案に忍び込ませた形です。野党には「だまし討ち」と主張するところもあります。

 男系維持派の人たちは、歴史や伝統は、変えるべきではないと主張しています。しかし、皇室は、時代に合わせて変わってきました。女性の社会進出、多様性容認の時代、社会の先頭に立って皇室が変わることには大きな意味を持ちます。民間の女性が皇室に入り、結婚したら男児誕生の大きなプレッシャーを受けるという旧時代のあり方は、今こそ変える必要があるのではないでしょうか。私たちが愛子さまや佳子さまに期待するのは、時代を変えていく存在であってほしいと考えているためだと思います。

森暢平 成城大学文芸学部教授。元・毎日新聞皇室担当。CNN日本語サイト編集長を経て、現在はジャーナリズム論を専門とし、近代皇室の社会史などを研究。著作には『天皇家の財布』『天皇家の恋愛』など