目次
Page 1
ー 嫌なことは忘れる! いい記憶ばかりの60年
Page 2
ー ハリウッドかレコ大か
Page 3
ー 台湾流の健康法

 空前の大ヒット曲『魅せられて』で知られるジュディ・オングさんは、今年、歌手生活60周年。76歳を迎えた今も変わらぬ美しさを保ち、パワフルな歌声を届け続ける。そんな彼女の激動の歩みと、輝き続ける美の秘訣に迫る。

嫌なことは忘れる! いい記憶ばかりの60年

実は、60周年という感覚はまったくなかったんです。昨年の秋に、出演した番組のプロデューサーから指摘されて、スタッフ共々“え、来年60周年なの!?”と大騒ぎになったくらいで(笑)」

 そうちゃめっ気たっぷりに微笑むジュディさん。芸能界を60年も泳ぎ切ってこられた秘訣をこう語る。

嫌なことは全部忘れてしまうのね。振り返れば、いいことばかりが走馬灯のようにバーッと蘇ってきます。だから、その流れた時間が60年と言われても、ピンとこないのかもしれません」

 ジュディさんは11歳で女優デビューし、すでに芸能界で活躍していたが、歌手としての一歩を踏み出したのは16歳のとき。

「当時は歌番組のほとんどが生放送。ある番組で、出番の前に楽屋でおしゃべりをしていたら、私の曲のイントロが流れてきて。大慌てで靴を履いて飛び出して、ゼイゼイしながら歌ったんです。後で先輩にこっぴどく怒られたんですが、それがデビュー直後の忘れられない思い出。それ以来、出番のずいぶん前から待機するようになりました(笑)」

 作曲家の筒美京平氏、作詞家の橋本淳氏という二人の巨匠との出会いも、彼女の歌手人生に大きな影響を与えた。

18~21歳くらいのころ、お二人から“歌にはストーリーがあり、主人公がいるんだ”と教わりました。けれどうまく表現ができなくて、何度もレコーディングを止められては、自信をなくしてトイレでよく泣きましたね」

 そんな表現への苦悩を乗り越え、1979年、運命の一曲『魅せられて』が誕生する。エーゲ海の風をまとったかのような世界観と美しい歌声は日本中を席巻し、200万枚を超える歴史的な大ヒットを記録した。

「最初は、なんて大変な曲かしらと思いました。16分音符すべてに歌詞がついているので、テンポに遅れず歌うだけでも一苦労。その上、歌詞もちょっと艶っぽい内容でしょう? 表向きは何でもないような顔をして澄まして歌っていましたが、実際は緊張感でいっぱいでした

 そんな中、『魅せられて』は彼女の予想をはるかに超えるスピードで日本中に浸透していく。

「時代劇の撮影中、マネージャーが血相を変えて走ってきたんです。“ジュディさん、1日で10万枚売れました!”って。当時は1日に製造できるレコードの枚数に限りがあったため、プレス工場は『魅せられて』の増産を最優先にしたそうです」

 この大ヒットを受け、人気番組『ザ・ベストテン』への出演が決まった際も、前代未聞の出来事があった。

「まだ時代劇の撮影の真っただ中だったので、井戸のある江戸の長屋のセットから生中継することになって。東京から白いドレスを届けてもらって、長屋のど真ん中で両手を広げて熱唱しました。あのシュールな光景は忘れられない思い出です(笑)」