ふたりの会話を盗み聞きする坂井

 寺西から「好きな人がいる」ときっぱり宣言され、それが内田だと気づいた坂井は、第5話では内田と寺西を呼び出し、ふたりの会話を『家政婦は見た!』ばりにふすまを細く開けて盗み聞き。「葵っていい人なの。友達思いでまっすぐで、嘘をつくのがすごくヘタで」などとふたりをじっくり試すような言動を見せる。そして葵が一人になると、内田が寺西との仲を隠していることを逆手にとって「私、澄晴君のことが好き。他の人に取られるなんて、想像しただけで死にたくなる。葵、わかってくれるよね?」とじわじわ追いつめていった。

 さて、ここから坂井がどう出るのか?

 そもそも、坂井の内田に対する感情は、単純な友情ではなさそうな描写も見られた。
 内田はかつて調香師をしていたが、花の匂いが感じられなくなり、他の部署に移った経緯がある。第3話で内田の嗅覚が戻りそうになった話を聞くと、

「忘れなよ。だってほら葵、香りのこと、頑張ってようやく折り合いつけたんじゃない。それなのにまた悩んでるなんて、葵らしくないよ。キッパリ忘れて、前向こう」
と言ったのだ。

 これは一見、内田を思いやっているように聞こえるが、内田に調香師の仕事に戻ってほしくないようにも聞こえる。

 坂井は介護に追われた自分の人生に不満を抱いていた。そんな坂井には、調香師を諦め、離婚もした内田(元夫は徳井義実)が、同じように不遇だから安心できたところもあったのではないか。だからやりがいのあった調香師に戻ってほしくない気持ちが、無意識のうちにもあったから、けん制する意味で言ったのではないか。

 親友だけど、自分より幸せであってほしくはない。

 この感情は理解できなくはないし、そういう難しい感情を演じさせたら、坂井は非常に巧い俳優だろう。

 しかも、自分を助けるように見せていた親友が、自分を振った男と恋愛関係になっていたとわかったら…? 

 後半戦、坂井がどんな行動で物語をかき回すのか、期待が高まる。

古沢保。フリーライター、コラムニスト。'71年東京生まれ。「3年B組金八先生卒業アルバム」「オフィシャルガイドブック相棒」「ヤンキー母校に帰るノベライズ」「IQサプリシリーズ」など、テレビ関連書籍を多数手がけ、雑誌などにテレビコラムを執筆。テレビ番組制作にも携わる。好きな番組は地味にヒットする堅実派。街歩き関連の執筆も多く、著書に「風景印ミュージアム」など。歴史散歩の会も主宰している。