願掛けの断酒からスイーツにハマる
精子があることはわかったものの、当時は男性不妊に関する情報も少ない時代だった。
「人に相談したりしているうちに、男性不妊でも子どもを授かる可能性は低くはないっていうことが、だんだんわかってきたわけ。それで、俺も臨んでみようという気持ちになっていったんだよね」
その後、妻の協力のもと、不妊治療を開始。しかし、2度にわたる顕微授精(体外受精)は失敗。妻との関係性も次第にギクシャクしていった。
「不妊治療を始めてわかったのは、俺なんかより女性のほうがもっと痛いってこと。男の痛みは局所に麻酔の注射を打つときの一瞬だけど、女性は卵子を取り出さなきゃいけない作業があるから、男よりも大変なんだよね。
まして不妊治療は金銭的にも負担が大きいし、お互い『不妊治療』のことばかり考えているうちに、毎日がギクシャクしてきてね。ケンカになって妻が家を出ていったこともあったし、俺も酒飲んで荒れたこともあったよね」
2度の失敗で、ユカイ自身は完全に子どもはあきらめていた。だがある日、妻から「もう一度だけ挑戦したい」と告げられた。そうして、旅行がてらに訪れた“男性不妊治療の権威”といわれる北九州のクリニックで3度目の体外受精にトライ。結果、念願の長女を授かることができた。
「受精卵の着床が成功したとき、願掛けとして“断酒”した。それまで水のように酒を飲んでいたんだけどね。でも今度は、スイーツに目覚めちゃってね。こっちは今でもやめられない(笑)」
「少しでも自分の経験が世の役に立てば」と考えたユカイは、2011年に『タネナシ。』(講談社)のタイトルでエピソードを書籍化。男を売りにしてきたロッカーが、男性不妊を公表するというレアケースとなった。
「そのへんに関しては、俺はいつもあけすけに生きてきたからね。ジョン・レノンだって、最後のほうは子育てのイメージが強かったじゃない? ジョンが一番最初にやって、みんなにバカにされてたんだよね。
ロックンローラーが子育て? みたいな。でも、俺はそういうジョンのことが好きだったから、俺が男性不妊を公表することも別になんとも思わなかったね」



















