「助けてもらえる」と思ったら閉められた扉
物心ついたころの風間さんの記憶には、母親からの叱責がある。「おまえなんか、産まなきゃよかった」。口をガムテープで塞がれ、手足を後ろで縛られて殴られることもあった。
母は風間さんをピアニストにしようと、ピアノを習わせた。だが譜面が読めないと叩かれた。それ以前から「教育虐待」は続いていたという。フリルのついたスカートなど、「女の子らしい」服装を求められることにも違和感があった。自分がどうありたいかより、親が望む子どもであることを求められた。
音大附属小学校の受験に失敗し、ピアノはやめることに。それを境に、虐待はさらに激しさを増した。押し入れに閉じ込められることもあった。
ある日、その扉を父親が開けた。
「大丈夫か?」
ようやく出してもらえる。風間さんはそう期待した。だが、続いたのは救いとは程遠い言葉だった。
「ママを怒らせないように立ち回ることくらいできるだろ。頑張れよ」
父親は、再び扉を閉めた。
母から暴力を受けたことだけではない。助けてくれると思った父に、助けてもらえなかった。その瞬間に味わった孤独や絶望は、風間さんの中に残った。
「意味不明ですよね。今思えば、父はあのとき、酔っ払っていたのでは。だって正気じゃないですから」
父親からは常に発泡酒の匂いが漂っていた。酔いのためか言動に一貫性がなく、風間さんにとっては「よくわからない人」だった。
そんな家庭で、唯一、自分を脅かさない存在がいた。モモコという名のウサギだ。
「モモコは唯一、自分を脅かさない存在でした。ただ、エサを待っているだけです」
だが、モモコとも別れる日が来る。父親が飲酒運転で人身事故を起こし、逮捕されたのだ。
「加害者家族」として社会からも厳しい目を向けられた。謝罪の場では、被害者家族から風間さんを指して「その子が代わりに轢かれればよかったのに」と言われた。
「親から否定された自分は、第三者からも否定されました」
その後、両親は離婚。転居先がペット不可だったため、モモコを学校に預けることになった。
家庭も変わり、安心できる存在まで失った。風間さんは、家の外へと居場所を求めていく。



















