すべてを医師任せにせず患者も意識改革を
検査や薬が少なければ少ないほどいい、という話ではない。谷口先生も、「100%無価値」と言い切ることは極めて難しいと改めて強調する。重要なのは、その医療行為が患者にとって最適かどうかを判断することだ。
「大病を心配して、とことん調べてほしいと望む患者さんには検査を受けさせるほうが医師もラクです。しかし簡単にそれを選ばずに、患者と根気よく信頼関係を築いて納得してもらうことが医師の矜持、プライドだと私は考えています。
その一方で、患者の強い希望で必要のない検査をして、偶然別の病気が見つかる可能性も0ではない。だからこそ、どこまで検査をすべきか、その判断は難しいのです」
患者側も、薬や検査にはそれぞれ利点とリスクがあるという最低限の知識を持っておきたい。そのうえで医師と相談しつつ両者を比較し、自分にとって必要な医療を選ぶ意識を持つべきだろう。
では、できるだけ無価値医療を避け、本当に自分に必要な医療を選別するには具体的にどう行動すればよいのだろう。谷口先生は、世界的に知られる「医師に尋ねたい5項目」を例に挙げる。
「医師からの提案を一方的に受け入れるのではなく、疑問を投げかけて対話しましょう。『抗生物質を出しましょう』と言われたら、『私の風邪は細菌性ですか?』と聞けばいい。『念のためCTを撮りましょう』と言われたら、『今すぐ撮らないと危険ですか?』『被ばくのない検査はありませんか?』と尋ねるのです。
信頼できる医師なら、必要な理由やリスクを丁寧に説明してくれるはず。医療は“お任せ”ではなく、医師と対話し、納得した上で選択していくものです」
また、日頃から自分の身体の傾向や既往歴を把握してくれる「良きかかりつけ医」を持つことは、自分を守る最大の防波堤になる。
「患者から求められた検査や処方を『必要ありませんよ』と断るには、実は医師にとっても勇気がいることです。だからこそ、しっかりと説明した上で、無駄な医療を省いてくれる医師は十分、信頼に値します。
良きかかりつけ医を見つけるのは運と縁で、就職や結婚と同じぐらい難しい。まずは、検査や薬がやたらと多すぎる医師は怪しんだほうがいいですね」
知り合いや近所の人に医院の評判を聞いてみるのはもちろん、不安がある場合は事前にクリニックにメールで相談するなどし、その対応を見るのもひとつの手だという。
疑問や不安に耳を傾け、対話してくれる医師をパートナーに選びつつも、すべてを任せきりにせず、自分で考えて医療を選択する。それが、無価値医療を遠ざけるための第一歩だ。














