6編の物語の中で、冷蔵庫の数が一番多いのが第三話の「冷凍庫冷蔵庫合わせて五台」。主人公は島で一人暮らしを送る、65歳の鈴木寿子。

「島に住む人は、天候が悪く、船で物資を運べないときのために大きな冷蔵庫や冷凍庫を持っていることが多い、ということをテレビ番組などで知りました。このお話では、島に住み、大きな冷蔵庫や冷凍庫をたくさん持っている人を書きたいと思いました」

ネット上の記事や投稿から作品の着想を得ることが多い

 寿子が住む島は、とある事情を抱えている。

「テレビ東京の『昼めし旅~あなたのご飯見せてください~』という番組で、2つの家庭しかない島へ行った放送回があったんです。特に仲が悪いわけでもないのに、お互い何十年も口をきいていないというお話が衝撃的で、そのエピソードをヒントに物語をふくらませていきました」

 原田さんは書籍や雑誌、テレビ番組、ネット上の記事や投稿、YouTubeなどから作品の着想を得ることが多いとのこと。

 41歳の海原多美が主人公の第五話「犬のご飯、私のご飯」は、ネット上の投稿がヒントになったという。多美は東京の会社を辞め、地方に移住して新聞配達員として働きつつ、3匹の保護犬と暮らしている。

「地方の古い家に住み、朝だけ新聞配達をして、残りの時間は猫と過ごしているという女性の投稿を読み、すごくいい生活だなと思ったんです。多美は東京で家賃を払うためだけに働くような生活から抜け出したいと思い、今の暮らしにたどり着きました。このお話に限らず、『世の中にはこういう暮らし方、方法もあるんだ』と感じてもらえたらいいな、と思いながら小説を書いている部分があるんです」

 第五話には強力粉を使った“高加水パン”、ミニマリスト的な思考の彼氏と同棲する27歳の村松陽愛乃が主人公の第二話「半殺し」では、おはぎに似た不思議な餅“半殺し”など、各話にさまざまな料理が登場する。

 原田さんは物語に登場する料理を、実際に作っているそうだ。

「半殺しはふかしたもち米をつぶしてお餅のように作りますが、普通のお米をつぶしたきりたんぽはわりとよく作っています。高加水パンはYouTubeなどのSNSで作り方がたくさん紹介されていて、簡単にできておいしいんです」