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ー クマが人里に出没するもうひとつの理由

 秋も深まり、クマによる農作物や人身被害が数多く報じられている。

 10月11日、愛知県豊田市の民家の玄関先で男性がツキノワグマに襲われ、眼球破裂の重傷。東京都八王子市では9月にイノシシ用の罠にかかったツキノワグマを緊急銃猟で駆除し、10月19日に都内で初となるクマ出没を想定した緊急銃猟の訓練が実施された。

 6月にはクマの目撃情報を受け、宇都宮市内の全小中学校が休校に。出没する場所が街の中心部という人間の生活圏に移ってきている。昨年はクマの生活圏である山中で、エサとなるドングリなどの木の実が凶作だったため、食べ物を求めて人里にクマが下りてきた、といわれていた。

クマが人里に出没するもうひとつの理由

 今年の状況について、「日本ツキノワグマ研究所」の所長、米田一彦さんは、

「ここ5~6年は、1年ごとに豊作と凶作が交互に入れ替わる状態。ただ、地域によって状況は変わります。東北から日本海側、新潟や北陸にかけてドングリは豊作です。関東から中部を見ると並作で、近畿以西は凶作になっています」

 と話す。確かに今年は、関東や西日本での目撃情報が増えている。ただ、エサの豊作や不作だけが人里に出没する理由ではない、と米田さんはこう続ける。

「一つは過疎化などで山間部の村落から人が消え、廃屋や放棄農地がクマの生息域になってしまうこと。そうなることで、クマの生息域が人間の生活圏に近づいてきたということです」

 こういった場所にすみ着くのは、若いクマだという。もともと山中で活動域を持っている強いクマを恐れ、人里に近い場所を活動域にせざるを得ないのだ。そして、意外にも人間が行う殺処分も原因だという。

「エサを求めて母グマと人間の生活圏に下りてきた子グマは、母親を殺処分されてしまうと山に戻ることができず、母親を見失った場所から動けなくなります。越冬を母グマから教わることがなかった子グマは、廃屋や民家の軒下などで冬を越し、春になるとその付近をエサ場として集落を荒らすわけです」

 現状を見ると人間の生活圏に出没するクマの数は、これから何年かは減ることはないだろう、と米田さんは語る。クマとの“共存”は難しいが─。

「自治体が単独で対策をするのではなく、一つのエリアで方針を決めて動かなくてはいけないと思います。広島県、島根県、山口県は中国山地を一つのエリアとして、共同でクマ対策をしています。ある県で駆除を進めていても、その隣の県で保護を訴えて捕まえたクマを山へ戻していれば、意味がなくなりますよね。ある程度の個体数の調整は必要だと思います」

 昨年は全国でクマに襲われた人は238人、死亡者数も13人と過去最多の数字を更新。今年前半はそのペースを上回る勢いだという。

「クマと人間にとっていちばんは、お互いが会わないこと。でも現在のような複雑な局面はまだ続くでしょうね……」(米田さん)