20150324_aogaku_eye
原晋(はら・すすむ)●1967年、広島県生まれ。中学から陸上を始め、中京大学卒業後、’89年中国電力陸上競技部へ。’93年に全日本実業団駅伝初出場に貢献するも、’95年故障で現役引退。10年間、中国電力でサラリーマン生活を送る。陸上への未練を捨てきれず、’04年に青山学院大学陸上競技部監督に転身。11年かけてチームを『箱根駅伝』初優勝に導いた
 10年前、安定のサラリーマン生活を捨て、青山学院大学陸上競技部の監督に就任した原監督。実績のない学校でゼロからのスタートを切り、“チャラくて最強”のチームを作り上げた秘密はどこにあるのか━。失敗を繰り返しながら、原監督が見いだした指導法を徹底解剖! 頑張るわが子を見ていると、ついつい、余計な口出しをしてしまうのが親心。応援する気持ちが空回りしてしまわないように、子どもたちの夢を上手にサポートする、とっておきの方法を聞いた。

監督の口癖は“なんか面白いことはないかね?”

 駒澤と東洋の一騎打ちと言われていた今年の箱根駅伝─。大方の予想を覆して初優勝を遂げたのは、ノーマークの青山学院だった。しかも、圧倒的な新記録というおまけつきの超サプライズ。実績のなかったチームを鍛え上げ、更地を耕し、栄光の道を切り開いたその人こそ、原晋監督(48)だ。

選手として箱根を走った経験のない原監督の指導法が大注目されました。それが、“ワクワク大作戦─自分のチームを見ている人をワクワクさせる走りをして、笑顔でゴール”です。東洋大のスローガンは“1秒を削り出せ”なのに(笑い)」(スポーツ紙記者)

 “青学はチャラい”と言われると、「最高の褒め言葉」と胸を張る。ツラい、苦しいという長距離走のイメージを覆し、楽しく走って優勝させてしまったスゴい監督なのだ。

「実家は広島の田舎で、駆けっこしか遊びがなかったんです。缶蹴り、町内1周リレーなどに明け暮れる中で、走ることが得意だと気づきました。それで自然に陸上の世界に入ったという感じです」(原監督、以下同)

 遊びが原点だから、ワクワクを大切にするのは当然のこと。グラウンドでの練習時には緊張感が漂うものの、終われば別の顔を見せるらしい。

監督の口癖は“なんか面白いことはないかね?”です(笑い)。監督が口にしたギャグは選手たちがマネして、寮内の流行語になります」(マネジャーの福島采さん)

 監督は選手たちと寮で共同生活を送り、奥さんの美穂さん(47)が寮母を務める。監督夫婦と選手たちは、大家族のようなものだ。

 原メソッドの中には子育てのヒントがあるに違いない! そう確信し、詰め寄る記者に監督が伝授してくれた秘策は全部で7つ。

やる気を引き出し、才能を開花させる

■1、迷いを見抜く質問でヤル気を確認し、期限を設定!

 子どもがヤル気を見せた時は、まずそれが本気かどうか確かめることが大切だ。

「塾や習い事に通いたいと言われて、ポンとお金を渡すのはダメですね。ただのワガママかもしれませんから」

 理由を自分の言葉で言わせてみれば、本当にヤル気があるかどうか、わかるのだ。

“どうしてやりたいの?”と目的を聞いてあげるといいですね。答えが“友達をつくりたいから”でもいいんです。例えば、“そろばんをやりたい”と言われたら、“どうしてそろばんなの? 習字はどう?”と別の選択肢を投げかけてみるのもいいですね

 “お金を出してあげるんだから、頑張りなさいよ”“簡単に辞めちゃダメよ!”などとプレッシャーをかけるのがいちばんよくないという。

 有効なのは、期限の設定。「ちゃんと1年間、頑張れる?」「3か月挑戦する?」 というように、無条件でやらせずに、目安をつくる。これが、後の踏ん張りにつながるのだ。

■2、ビッグな夢のイメージトレーニングで火をつける!

 目標を持つことは大切だけど、それに追いまくられるのでは逆効果。大きな夢を目指すほうが頑張れるという。

“偏差値〇〇以上を目指さなきゃ!”と言われても、子どもは嫌な気持ちになるだけ。モテたい、大きな家に住みたい、世界旅行に行きたいなど、将来の夢を聞き、そのためにどのくらいのレベルの学校に入る必要があるかを教えてあげたほうがいい

 実際、監督は練習の後、「もし明日が箱根駅伝なら〇区はお前」と、選手たちに話していた。練習が将来の夢に結びついていることを、わかりやすくイメージさせるわけだ。

「勉強や練習そのものが楽しくなっていくことが大事なんです。“頭がいいほうがモテるじゃない?”でもいい。輝く自分を好きになってもらうためのサポートですから」

 勉強のための勉強は、プレッシャーになるだけ。将来の大きな夢を掲げることで、そのために今どんな努力が必要なのかに気づくのだ。