定年後に訪れる“新生活”に待ち受ける3大リスク「夫・お金・仕事」の不安と悩みを解消するシニアライフ入門。まずは「居間夫」のリスクについて。

 男女ともに平均寿命が延び、定年後、「第2の人生が始まる」といわれる時代。年金や貯蓄を切り崩しながら、20年も30年もひっそり、のんびり暮らすには、あまりに時間を持て余し、金銭的にも心もとない。

 そこで今、注目されているのが、“年金プラス”な生活─。新たなライフワークを見つけて、生きがいも収入(小遣い)も手にする充実セカンドライフだ。

■“頑張ってきた”という自負がある夫は、妻に対する甘えも強い

岡野あつこさん(夫婦問題研究家)
岡野あつこさん(夫婦問題研究家)

 そんなキラキラした“第2の人生計画”を脅かす最大の難関となるのが“夫”。

 長年連れ添ってきたパートナーがリスクとして立ちはだかる悲しき実態を夫婦問題カウンセラー・岡野あつこさんは次のように明かす。

「定年後、妻が望むのは、新婚当時のような甘い生活ではなく、自立した関係。一方、夫は“今まで浮気もせず、少ない小遣いで仕事を頑張ってきた”という自負がある。そのうえ、妻に対する甘えも強いんです」

 再就職に対する考えを尋ねても、のらりくらり。なかなか行動せず、家にずっといるが、家事はもちろん手伝わない。地蔵のように居間から動かぬ『居間夫』に化けるのだ。結果、妻は生活リズムを変えなくてはいけない状況に追い込まれる。

「夫の定年前は、午前中に育児や家事を効率よくこなし、ママ友と会ったり、買い物に出かけたりする“ご褒美タイム”を作り出していましたが、定年後一変。夫が毎日家にいて、自由時間が奪われてしまうんです。

 それでも口だけは達者で、外出の準備をしていると“どこに行くの?”“また遊びに行くの?”と問い詰められ、食事の時間になれば“昼飯はまだ?”と急かされます。でも、作ったところで“こんなにショボイの?”と言われる始末。快適な生活はとても送れません」(岡野さん、以下同)

■“居間夫”の存在が原因で身体に不調をきたした例も

 積もりゆくストレスが“離婚”の2文字を妻の脳裏にちらつかせる。

「このストレスは、産後クライシスの恨みも大きく影響しています。子どもが小さいときに育児や家事を手伝わなかった夫が、定年になった今も家事をまったく手伝わない。あのころの不満が甦ってくるんです。専業主婦を頑張っていた人ほど、家事を軽んじる夫との生活に苦しみます」

 定年後、心を入れ替えた夫になるのでは……という淡い期待は見事なまでに粉々に打ち砕かれる。

 岡野さんには、こんな女性からの相談もあるという。

「“夫が58歳で早期退職して約7年。家に毎日いるようになってから軽いうつが出始め、ぜんそくの症状もひどくなったようです”という方も。身体に不調をきたした方には離婚をすすめています」

■チャンスを与えないと、夫は変わらない

 事態は深刻だ。居間夫に監視され、家事に縛られていては、外出さえままならない。改心させるには、どうすればよいのか?

「すぐに結果を求めてはいけません。まずは、気長に構えることが大事です」

 と岡野さん。妻が夫に直接言うのではなく、子どもに協力をお願いするのもひとつの策で、

「“お母さんに感謝しなよ”“旅行に連れてってあげなよ”“もっと家事を分担してやりなよ”など、子どもの口から伝えてもらう」

 きっかけがないと行動できない夫には、プチ家出も効果的だという。

「“はじめてのおつかい”の感覚で、夫を自立させるために週末の家をあけ、妻のありがたみを実感させる。チャンスを与えて手を差しのべないと、夫は変わらない。今まで培ってきた経験と知恵をフル活用し、夫が自立できるようにコントロールしてください」