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 川崎市幸区の介護付き有料老人ホーム『Sアミーユ川崎幸町』で、昨年11月から12月にかけてわずか2か月の間に、入居する高齢者が施設から転落して死亡する事故が3件連続した。

「警察はひどい。捜査員1人がバイクで来て、ろくに捜査もせず転落事故って判断したんだから。鑑識も来てないのよ。いまさら騒いだって、3件とも指紋なんかの物証は何もありゃしないわよ」(内部事情に詳しい近所の住人)

 この事実が明るみに出たのはつい最近のこと。警察当局は、連続不審死に事件性があるかどうかを含めて慎重に調べているという。

 第一の事故は昨年11月4日、入所者の男性(当時87)が4階の401号室のベランダから転落。同12月9日には女性(当時86)が同じ401号室のベランダから。同12月31日には女性(当時96)が自室ではない601号室のベランダから転落した。

 いずれも個室で暮らす高齢者で、高さ120センチのベランダの手すりを乗り越えて転落したと判断され、発見時刻は午前1時50分から同4時17分の未明だった。

 ベランダに足がかりになるようなパイプいすが残っていたケースもあり、認知症の入所者も含まれる。遺書はなかったという。神奈川県警は初動捜査の態勢について「捜査中なので答えられません」。

 事故だったとしても、ホーム側の対応には疑問符がつく。2件目以降は手すりを高くするなど再発防止策を講じられたはずだが、その手立てをしていない。

「確かにそうすべきだったかもしれませんが、手すりは十分な高さだと思っていた」

 と、同ホームを運営する『積和サポートシステム』(本社=東京都中央区)は弁明する。

 同ホームは2011年にオープン。鉄筋コンクリート6階建てで80室あり、月額料金は約22万円。

 オムツ代、電気代、水道代などの諸経費を合わせると30万円近くなる“高級老人ホーム”である。

 介護付きをうたった同じ『Sアミーユ』の名前がついた施設は首都圏に25か所ある。ワンランク下でサービス付き高齢者住宅の『Cアミーユ』は首都圏30か所。こちらは諸経費込みで約20万円程度という料金設定だ。

「うちの地域にもアミーユがあって、悪い話は聞いたことがありませんでした。高級ホームなのに入所するとき一時金をとらないのがいい。施設によっては数百万から数千万円するところもありますから」(ベテラン介護関係者)

 近隣住民らの話によると、建設当初はワンルームマンションになる予定だったという。

「部屋が埋まらないと判断したんだろうね。途中で急に老人ホームに変更され、市も認定した。近隣住民には説明会もなくて、担当者が入居パンフレットを持って各家庭を回っただけ。実際の入居者はほとんど県外」(近所の男性)

 高齢者が高所から誤って転落したり、飛び降り自殺することはよくあるのだろうか。

「聞いたことがない。短期間に連続3件はおかしい」(前出の介護関係者)

 現場近くの70代主婦もいぶかしがる。

「80歳を越えた女性の平均身長は145センチぐらいっていうじゃない。しかも女性は足が不自由な人が多いし、体力もない。無理に死に急がなくてもいずれお迎えが来る年なんだから自殺はないと思う」

 施設を監督する権限を持つ川崎市の健康福祉局高齢者事業推進課は、連続転落死が発覚した直後の記者会見で、「非常に不自然ととらえている」と述べている。

〈フリーライター・山嵜信明〉