20160524_niigata
中村容疑者の自宅

 2014年夏ごろ、新潟県糸魚川市。住宅の2階寝室で、事件は起きた。娘が自宅で出産した乳児を刃物で殺害し、翌日、父親がどこかに遺体を遺棄。

 新潟県警は4月25日、殺人・死体遺棄の疑いでアルバイト作業員の中村栄志容疑者(65)を、殺人容疑で義理の娘の中村一美容疑者(28)を逮捕した。一美容疑者が2月、転居先近くの愛知県警半田署に出頭したことで発覚した。

 捜査関係者によると、栄志容疑者は容疑を否認。一方、一美容疑者はおおむね容疑を認め、性的関係があったことも認めているという。一美容疑者からみて栄志容疑者は、母親の再婚相手。

「まるで恋人気取りよ、腕を組んで歩いたり。どこに出かけるにも栄志と一緒でね」

 父と娘の密着ぶりを証言するのは近隣住民だ。一美容疑者と母親の様子は、

「足が不自由なお母さんが車イスに乗っているから、お母さんの車イスを押しながら散歩したりするのは見たね」

 母親の再婚相手と、男と女の関係になってしまう獣道に、いつから2人は足を踏み入れてしまったのか。

「現在捜査中ですが、未成年のころから関係があったとみています。強姦のように無理やり暴力をふるって関係をもったわけではないようです」(捜査関係者)

 近所の住民は、栄志容疑者の人柄についてこう話す。

「男気があって大酒飲み、山菜とりも魚とりも、とってもうまい。本当に器用な人で、頼りがいがあるっていうか」

 反面、こんな声も聞かれた。

「自分勝手で生意気な部分もあったよね。仕事も続かないで転々としていたみたいだし」

 それでも母にとっては頼れる再婚相手、娘には頼もしい男性に映ったのかも。一美容疑者は中学卒業後、地元のスーパーや宿泊施設で働いたこともあったという。

「どんな仕事もやってくれて、まじめで素直ないい子でした」(宿泊施設の元同僚)

 職場では評判のよかった一美容疑者だが、父娘ふたりが2階の寝室で、母親がひとりで1階で寝起きしていることまでは、知られていなかった。

「奥さんもね、生活ベースで栄志や一美ちゃんに頼らないといけなくなって、何も言えなかったのかもしれないね。引け目があったんだと思うよ。奥さんがああなったら栄志もやっぱり男だから、娘のほうに目が向いちゃったのかもしれないね」(近所の主婦)

 犯罪心理学に詳しい新潟青陵大学の碓井真史教授はこう語る。

「社会から隔絶された家庭では、母親の力が弱くなると、娘が母親役を演じるようになることも。今回の場合だと、妻が車イスで家事などができない。そうすると夫は、妻ではない娘が家事などをしてかいがいしく面倒を見てくれると、かわいく感じるようになる。父親も娘に対して妻を求めるようになる。そして最終的には性的な部分まで求めるようになっていくんです」

 夫と娘の怪しい関係を、1階の寝室でひとり寝する妻=母は、古い木造家屋がきしむ音に、耳をふさいでいたのか。

「父親が性的虐待を娘にしていることを知りながら、黙認している母親がいるケースは少なくありません」(碓井教授)

 そして、こう続ける。

「どうしても男をつなぎとめておきたい、そのためには娘に対する性的虐待も黙認するということです」

 一昨年の夏ごろ、父親の甚平を着て出歩く一美容疑者の姿を目撃した地域住民は、当時をこう振り返る。

「本当の親子ならわかるけど、みっともないからやめなさいって言ったの。今思えば、妊娠を隠すためだったのかな」

 しかし、わが子の殺害から1年半たった今年2月には、一美容疑者は糸魚川まで知人女性に迎えに来てもらい、愛知県へと移り住んでいた。産んだばかりの子どもを殺すように指示したとされる栄志容疑者

 そのとき初めて一美容疑者は取り返しのつかない関係にハマってしまったことを悔やんだのではないだろうか。そんな父との別れを決意したのかもしれない。