■もしも、9月まで続投していたら…

 後任の都知事を決める選挙は7月14日に告示され、同31日に投開票されることが決まった。任期4年の通常の都知事選とは異なり、候補者選定にかけられる時間は少ない。政治とカネ問題で、猪瀬直樹前知事、舛添氏と立て続けに辞任に追い込まれているだけに、候補者の“身体検査”にも手を抜けない。

 どんな顔ぶれになりそうか。政治評論家の浅川博忠氏の話。

「自民・公明の与党側は、桜井俊氏を軸にしている。桜井氏は17日に総務省事務次官を退官したばかり。本人は慎重姿勢をみせているが、本質的には大出世で願ってもない話。総務省は地方自治を扱う役所なので霞が関の人脈を生かすこともできる。人気アイドルグループ『嵐』の櫻井翔くんの父親だから若者票を取り込めるのもいい」

 キーワードは「実務型」という。猪瀬氏、舛添氏と知名度の高いタレント知事の失敗が続いたため、赤字財政を立て直した旧内務官僚出身の鈴木俊一元知事のように、地方自治に精通した人物がふさわしいという。再び浅川氏の話。

「民進党は蓮舫代表代行ならば勝てるとふんでいる。参院東京選挙区で3選を目指すが、本人は都知事選出馬に意欲を見せた後、慎重姿勢に転じた。与党側はほかに小池百合子衆院議員、親子2代となる石原伸晃経済再生相、若手の丸川珠代環境相の名前が挙がっている。

 いずれにしても民進党の出方をうかがっている。あと出しジャンケンで、実務型の桜井氏を担いで“息子の知名度”を控えめに利用することになるのではないか」(浅川氏)

 嵐の櫻井翔は慶大卒でニュース番組のキャスターを務める秀才肌。父親とは丸顔や温和な雰囲気が似ている。桜井氏は元官僚で政治資金を使える立場になかったので、舛添氏のように過去の支出をチェックされることはない。

 誰が出馬しようと、巨額の選挙費用がかかることは間違いない。

 さて、説明責任を放棄した舛添氏はどれほどの退職金を手に入れるのか。都庁に確認すると、退職時の給与月額145万6000円を基準に算定されるという。

「月給に在職期間29か月(2年5か月)をかけた総額の52%が支給されます。このパーセンテージは業務上の功績などとは関係ありません。舛添氏の退職金は、所得税や住民税の税引き前で2195万6480円になります」(都総務局人事部の担当者)

 舛添氏は都議会の最終盤で「リオ五輪までは」と延命を懇願。交換条件として7月以降の給与を100%カットする条例案を提出しようとしていた。しかし、辞職に伴って撤回された。もし、9月まで続投していたら、退職金はゼロになったという。はからずも、盗人に追い銭となった。