■若者言葉は“相手を傷つけない会話”

 そして“共感”と並んで、若者言葉に見られるのが意外にも“気遣い”なのだそう。例えば、『おくちょ』は「おくってちょうだい」で、相手に対してのお願いなのだが。

「お願いや命令に聞こえないようカドを立たせず、毒の部分があれば過剰に取り除く、大人では考えられないような気遣いの要素があると思います。

“メンディー”も同様に“面倒くさい”と直接言うよりも、ノリで“メンディーよね”と言ったほうがやわらかく聞こえます。コミュニケーションにおける若者の気遣いは、年々過剰になっている気がしますね」(瀬沼先生)

 たしかに「話の流れをぶった切る」=『豚切り』も、「話変えたよね」と指摘するよりもやわらかく、加えて笑いも作ることができる。笑いにすることで、相手を傷つけない会話にしているのかも。

「相手を傷つけることによって自分が仲間はずれにされてしまう、学校生活をひとりで過ごさなくてはいけなくなるかもしれない。とにかく仲間でなくなる、グループからはずれることを恐れている部分はあると思います。

 そういう意味では何とか嫌われないように気遣い共感しあう。“わかるわかる”と相手とつながりたがる言葉が増えているのだと思います」(瀬沼先生)

 主に女子により、何につけても多用されすぎた「かわいい」にも、「共感と気遣い」による変化が表れている。

「あまりにも気持ちがこもっていない空虚感、むなしさを何となく実感しているのでしょう。いろいろなニュアンスの“かわ”が増えているのは、この空虚感に対する反発、反動のような要素が出ているのかなと思えますね。このかわいいは“ウソじゃないよ”“本当に思っているよ”という意味で、バリエーションが増えているのかと」(瀬沼先生)