この負傷があったからこそ今季は休養を望む声も大きかった。今年から羽生が所属するANAスケート部の監督に就任した城田憲子氏は雑誌のインタビューでこう胸の内を明かしている。

《今季は休んでよいという気持ちで構えています。彼にこれ以上苦しんでほしくはありません》(『フィギュアスケート日本代表2016メモリアル』より)

 そんな中で行われた公開練習だったが、ケガを微塵も感じさせない素晴らしい動きを披露してくれた。

「羽生選手が滑るたびに、ブライアン・オーサーコーチから指摘が細かく入っていましたね。ジャンプ後の足さばきや、滑りにタメを作るなどといったことです。今季から取り入れた4回転ループを難なく決めるなど、仕上がりは上々に見えました」(現地を訪れた報道関係者)

 しかも、4回転ループは公式大会ではまだ誰も成功していないジャンプ。これを完璧に手に入れれば、大きな武器になることは間違いない。

「ショートプログラムの冒頭で、イーグル(両足を伸ばしてつま先を180度開いて滑る姿勢)からジャンプの構えに入った際、報道陣からどよめきが上がりました。

 4回転ループの入り方にイーグルを加えるだけでなく、着地後のランディングにもイーグルをつけています。これは、大きな加点がつきます」(前出・現地を訪れた報道関係者)

 昨季の世界選手権では、同門のハビエル・フェルナンデスに首位を譲ってしまった。王者奪還もかかる今季だからこそ、前人未到の330点台を獲得した昨季より基礎点の高い構成にしてきている。もちろん、その先には“オリンピック連覇”という目標も視野に入っているに違いない。