2万7862人の署名を手にする山尾志桜里議員
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 また非常に良心的な取り組みと評価された自治体もある。

 岡山県岡山市。'03年から'14年まで待機児童ゼロだった同市だが、'16年には729人に跳ね上がり、世田谷区に次ぐ不名誉なワースト2に。その理由を、同市岡山っ子育成局就園管理課が明かす。

保育園の申込書には、第3希望まで書けますが、第3希望までに入れなかった人は全部待機児童にしようということになりました。(以前の集計が)市民感情とかけ離れているのではないかと感じたためです」

 虚飾のない数字は、まさに“市民ファースト”といえる。

 厚生労働省の調査によれば、'14年まで減少傾向にあった待機児童数だったが、'15年から'16年にかけては、再び増加傾向に転じた。そんな中、減少に成功している自治体もある。

 '15年から'16年にかけ全国1位、400人以上の待機児童の減少を成功させた千葉県船橋市は、

施設整備による受け入れ枠の拡大と保育士の確保に力を入れてきました。'16年から、保育士1人の給与に月額約3万円を上乗せしています

 東京都杉並区でも改善の兆しが見える。『保育園ふやし隊@杉並』が実施したアンケートによれば、

「最終集計がまだすんでいないのですが、昨年と比較すると待機児童が5〜6%減少し、自由記述欄にも“区はよく頑張った”といった前向きな声が多くありました」

 小池百合子都知事は、昨年9月、待機児童対策として126億円の補正予算を計上した。都福祉課によれば、

「受け皿となる施設の整備を第1とし第2に働く人の確保に重点が置かれます。2017年度予算ではモデル計算で100人定員の施設で保育士1人あたり月額平均2万1千円を上乗せする予定です」

 実際の声を聞きたくて世田谷区で認可保育園の2次募集の申し込みに来た母親に声をかけると、

「子どもは2人目なんですが、保活に翻弄される毎日で、7年前と何も変わっていないですね。育休はとれそうですが、早く仕事に戻りたいんです。でも、来年も入れるかどうか……

 今年は大幅に改善が見込めるという話も聞くというが、区民が直接肌で感じるものとしては、まだまだ遠いようだ。

 待機児童問題の根本にあるのは施設の整備と保育士の処遇。山尾議員は保育士の待遇改善を与党がもっと議論するべきだと訴える。

私が政調会長時代に、保育士給与を月額5万円上げるという法案を、5野党で提出しました。議論するかどうかは、数の力で決まるんです。数を持っている与党側に、国会で議論しましょうといってほしいところです

 大規模マンションの建設や共働き世帯の増加により生まれる新たな保育ニーズ。安心して産み育てる社会をつくること。国や地方自治体の対応が問われる。