「祐一さんは、○○って珍しい名字ね」

「そうなんですよ。先祖が九州の△△という町の出身で、その地域には多い名字なんです。子どもの頃から親父に“この名字を途絶えさせたらご先祖様に申し訳ない。祐一が結婚したら男の子をつくって、この名字を受け継がせるんだぞ”と言われて育ちました。だから漠然と大人になったら結婚するものだと思っていました」

 180センチメートルの長身、サイドを短く刈り込んだヘアスタイルには清潔感があり、服の趣味も悪くない。女性からは好感をもたれるタイプだ。それなのに、「実は、最近まで結婚はもうしなくてもいいかなと思っていたんです」と言う。

 その祐一が、なぜ “結婚をしよう”と思うようになったのか。まずは恋愛遍歴と結婚までの経緯をひもとこう。

「初めて彼女ができたのは大学2年生の時です。恋愛は、まあ遅咲きデビューですね。でも、そこからは人並みに恋愛をしてきたと思います」

 大学を卒業して、メーカーに就職。大学時代の彼女とはお互いに仕事を持つようになると、時間と気持ちのすれ違いができて別れてしまった。

 その後、27から30歳になるまで付き合っていた2つ下の女性がいたが、そろそろ結婚を言い出そうかと思っていた矢先、「別に好きな人ができたから」と、振られてしまった。

「彼女の28歳の誕生日にプロポーズしようとダイヤのネックレスまで買っていたんで、当時はかなりショックでした。おかしな兆候はあったんですよ。振られる2カ月くらい前から、デートの約束をすると直前で“急な仕事が入った”とか、“母の具合が悪いから、今日は早めに帰宅しないといけない”とかドタキャンが続くようになっていたので」

 失恋による傷は大きく、しばらくは女性と付き合う気持ちにはなれなかったそうだ。ただ誘われれば合コンや飲み会には出向き、そこで知り合った女性と連絡先の交換をしては、2、3度食事はする。しかしそこから真剣な交際に進展することはなく、30代も半ばになっていた。

35歳を過ぎると、出会いは一気になくなった

「35歳を超えると、恋愛事情って一変するんですよね。“いいな”と思う女性にはすでに彼氏がいるし、合コンの誘いも減る。出会いが格段に少なくなりました」

 さらに、会社では中堅扱い。責任ある仕事を任されるようになって、日々忙しい。月曜から金曜までは夜10時近くにクタクタになって帰宅し、土曜日は1日死んだように眠る。日曜日は午前中ダラダラして、午後にプラッと近所のホームセンターやショッピングモールに買い物に行くような生活。「恋愛から、どんどん遠のいていきました」。

就職してからはひとり暮らしをしていたものの、38歳のときに実家に戻った。これも、祐一から恋愛や結婚を遠ざける要因になった。