上戸彩がはまる「孝行娘のジレンマ」とは

 女優・上戸彩は、孝行娘のジレンマにはまっているように私には見えます。上戸は『徹子の部屋』(テレビ朝日系)などいろいろな番組で、両親の離婚で逼迫(ひっぱく)した家計を助けるために芸能界入りしたこと、財布には二千円しか入れないで貯金をし、お母さんに家をプレゼントしたこと。結婚したら山口百恵さんのように引退して、たくさん子どもを持ちたいことを話しています。

 家庭に対する思い入れは並々ならぬものがあり、『女性セブン』(小学館)によると、「料理や掃除、洗濯とか、女としての仕事をちゃんとこなせるようにしたい」と家事を請け負う宣言をしていました。そんな上戸ですが、EXILEのリーダーだったHIROと結婚し一子をもうけたものの、離婚危機説が何度も浮上しています。

 親孝行、家事は女性の役目、家族が一番。ここまで家庭を優先に掲げながら、離婚説が出ることに婚活女子はとまどうかもしれませんが、ここに孝行娘の典型的な盲点が隠れているように私は思います。親孝行と過去への執着は紙一重なのです。孝行娘は「お母さん(と私)かわいそう」という過去と、「だから、こんな家庭がほしい」という未来にばかり目をやって、今をおろそかにしがちです。理想の家庭は努力ではなく、男性と作るものです。ですから、大事なことは、男性といい関係を築くことなのです。

 これまでの人生に欠けていたものを、結婚生活に求めることを私は“ココロの借金”と呼んでいます。傷ついた心を受け止めてほしいという気持ちは、理解できます。が、この発想は、男性に「オレが過去に作った借金、愛してるなら、全額返済してくれるよね?」と迫られるくらい、理不尽で暴力的な行為であることも忘れないでください(ココロの借金の詳細については、拙著『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』をご参照ください)。

 娘に結婚してほしいと願うお母さんにとって、最大の親孝行とは、みなさんがしっかりした伴侶を見つけることではないでしょうか。そもそも、健康でお仕事をしている時点で、みなさんは十分、孝行娘です。これまで親孝行してきた人は、お母さんに費やしてきた時間を、男性のために使ってみてください。お母さんでなく、男性とたくさん会話すること。それが“婚活環境”を強化することにつながります。

 次回は最終回となります。『東京タラレバ娘』(講談社)のタラレバ娘たちはなぜ結婚できないかについて、考えたいと思います。

 

<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。2016年8月に男性向け恋愛本『確実にモテる世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)を上梓。