【九州・沖縄】九州なのになぜか山口さんがトップ

■福岡──圧倒的に田中

 福岡では田中がダントツの1位。2位は九州に多い中村、3位は西日本に多い井上、4位は北九州独特の古賀、5位が西日本を代表する名字の山本

「西日本と九州の特徴を合わせたようなランキングになっています」

 県8位の松尾、10位の山口も北九州に多い名字。福岡独特の名字としては石橋、白水(しろみず)、許斐(このみ)。珍しい名字には京都(みやこ)、冬至(とうじ)、不老(ふろう)など。

■佐賀──石丸、田中丸、源五郎丸

 県1位は山口で、お隣の長崎でもトップ。

「江戸時代、佐賀と長崎は合わせて肥前国でした。両県の傾向は似ています」

 県3位に古賀、4位に松尾、5位に中島と、北九州らしい名字が並ぶ。江口、江頭、副島(そえじま)、大坪、岸川、横尾などは佐賀らしい名字。また佐賀には田中丸、石丸、市丸、船津丸、源五郎丸など“丸”がつく名字が多いのも特徴。丸は、開墾した土地を意味する。

■長崎──佐賀と似ています

 1位山口、2位田中は佐賀と同じ。3位に古賀が入っているのがレア。岩永、井出、古川も両県に見られる名字。長崎らしい名字は、県16位の林田。島原半島に多く、熊本の天草などにも見られる。また県41位の平山は対馬や五島列島に多い名字。さらには浜崎、田川、出口、浦、阿比留(あびる)、高比良(たかひら)なども。

「阿比留は対馬でいちばん多い名字。代々、対馬の官僚を務めました」

■熊本──井さんがたくさん

 北九州全域に広がる田中、中村がツートップ。熊本独特の名字としては県12位の緒方、29位の田上

「九州以外では“たがみ”と読むことが多いのですが、熊本では“たのうえ”が非常に多いです。県30位の上村も、新潟では“かみむら”と読みますが、熊本では“うえむら”です」

 熊本らしい名字には清田(きよた)、古閑(こが)、田尻、赤星など。また阿蘇地方には、という漢字1文字の名字が集中。

■大分──なんといっても〇藤

 大分の1位は佐藤。西日本ではかなり珍しい。県ランキングには2位の後藤ほか、工藤、首藤、衛藤、安藤がトップ30入り。

「九州全体に多い田中、山口、中村。北九州に多い古賀、松尾。南九州に多い山下、坂元。大分ではひとつもトップ10に入っていません。名字の傾向は関東地方に近いですね」

 県6位に安倍、9位に阿部など、漢字まで聞かないとわからない名字が多いのも特徴。大分らしい名字には阿南(あなん)、姫野、麻生(あそう)など。

■宮崎──ダークホース・黒木がトップ

 ほかの県ではほとんど見られない黒木が、宮崎では1位に。黒木は全国ランキング300位台。メジャーとはいえない名字ゆえに、異例ともいえる。県2位は甲斐(かい)、3位は河野(かわの)、6位は長友と、かなり独自性の強いランキング。

「宮崎らしい名字は岩切、金丸、中武、押川、椎葉(しいば)、興梠(こおろき)などです」

 珍しい名字には大平落(おおでらおとし)、下り藤(さがりふじ)、砂糖元(さともと)、五六(ふのぼり)など。

■鹿児島──本じゃなく元です

 鹿児島の1位は中村。45の都道府県でトップ50入りするメジャー名字だが、県単位で1位なのは鹿児島だけ。トップ50には有村、鮫島、大迫(おおさこ)など県外では見られない名字が目立つ。

「鹿児島では松元、坂元、福元など“本”ではなく“元”と書きます。また堀之内、竹之内、竹之下など“〇之〇”という名字も多いです」

 また、奄美地方は琉球文化圏の影響で、漢字1文字の名字が多い。

■沖縄──独自名字のオンパレード

 1位比嘉、2位金城、3位大城、4位宮城、5位上原、6位新垣、7位島袋……沖縄のランキングは他県とはまったく異なる。

「比嘉、新垣、島袋、県11位の知念、12位の仲宗根などは、全国の85%以上が沖縄在住です」

 沖縄に独自の名字が多い理由は、琉球語の影響や地理的な要因もあるが、江戸時代に支配した薩摩藩が“大和風”の名字を禁止したことにもよる。

<教えてくれた人>
森岡浩さん◎姓氏研究家。歴史学や地名学、民俗学などを踏まえつつ、名字を実証的に分析している。『人名探究バラエティー 日本人のおなまえっ!』(毎週木曜午後7:30~NHK総合)レギュラー。著書も多数。
http://www.office-morioka.com/