家族が以前住んでいた部屋で父親は娘と無理心中を図った
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 後日、警察に見せてもらったマンションの防犯カメラには、うれしそうな娘の姿が残されていたという。

「映画を見て、おもちゃを買って、最後にちゃんと父親したかったんでしょうね。娘まで勝手に連れていって、最後の最後まで自己中で……」

 娘を行かせなければよかった。そんな思いはないのか。中村さんは、

「娘の遺体と対面したときは、“ごめんな。行かせてごめんな”と後悔ばかりでしたが、結局いつかは起こっていたんじゃないかと思います。弁護士さんからも“連れ去りは大丈夫ですか”と第三者が立ち会う施設の利用なんかもすすめられていましたけど、まさか自分の娘に手をかけるなんて思いもしませんでした」

 そして、今回の事件の原因についてふれる。

「彼の弱さが起こしたものだと思っています。養育費も払えないように仕事も辞めていたみたいで、私を困らせてやろうという気持ちがあったんだと思います。それと、やっぱり帰り際、子どもが可愛くなったのかもしれませんね」

 実の娘を亡くした今だからこそ、中村さんは思うところがあるという。

「子どもが会いたいと言うのなら父親には会わせるつもりでしたし、その気持ちを酌むのが親の役割。子どもに会えないのは寂しいでしょうし、子どもにとっても面会交流は必要です。私がお話をすることで、2度と同じような事件が起きないように、何かが変わればと思っています」

 児童心理学の専門家で東京国際大学の小田切紀子教授は、

「問題が起こるかもしれない。連れ去られるかもしれない。そういった場合には、家庭問題情報センター(以下、FPIC)のような第三者が立ち会っての面会交流も可能です。なにより何のために行っているのか。父母がしっかり理解することが大切です」

『親子の面会交流を実現する全国ネットワーク』略称『親子ネット』によれば、毎年約24万組の離婚が成立しているが、子どもとの面会交流ができていない親は7割、毎年約16万人の子どもが別居親との関係を断絶させられているという。夫婦は離婚すれば他人だが、子どもにとっては父親も母親も変わらぬ親。小田切教授は、

「だからこそ、夫婦の問題と親子の問題は、切り離して考えてほしい」

 と話し、さらに続ける。

「子どもにとって離婚は、青天の霹靂。妻と夫の関係を終えたとしても、父と母という役割から、子どもの負担をどうしたら減らせるか、子どもをいちばんに考えてほしい」

 とはいえ、お互いにいがみ合っている夫婦は、不寛容の感情が先走る。その結果、別居親が子どもに会えないケースが続出しているーー。