慶應義塾の創設者・福沢諭吉先生

 この説明会で出願書類の配布日時が発表され、10月1日の当日消印有効の締め切りまでに、説明会で聞いた話をもとに願書の内容を練ることになる。

 幼稚舎の場合、横浜初等部(2013年開校、幼稚舎とは教育方針や進学先が異なる)と違って願書を出せば全員が受験できる。

 ただし、個人情報保護の観点からか、保護者の年齢・職業・出身校などは記入できない。そのため、備考欄に無理やり、出身大学や会社名・役職を書く人もいるそうだ。

 この願書の自由記述部分では、福沢諭吉の『福翁自伝』をいかに理解しているかも問われている。幼稚舎の使命は“慶應義塾子弟のための学校”という要素が色濃く現れているのだ。

 親子何代かにわたって幼稚舎出身ともなれば「3代目の塾魂が息子には間違いなく流れていることを確信しております」などと書く親もいるという。

 保護者面接がないので、願書でしか保護者の「思い」を告げることができないのだ。

 次に待ち受ける考査では、持参する体操服に着替えて挑む。このとき、幼稚舎登竜門と呼ばれる御三家幼稚園(すべて港区にあり、若葉・愛育・枝光会がそれに当たる)や、体操教室の規定体操服を着ていると合格率が上がるという噂(うわさ)も。

「これまでどれだけの時間、労力、お金を費やしたのだろうか」

 しかし、そんなことに思いをはせる時間もなく子どもたちは考査からあっけなく戻ってくる。

 試験時間はたったの1時間半程度。筆記試験(ペーパー)や面接がないぶん、ほかの受験校とくらべて試験が終わったという達成感があまりないのだ。

いったい何で見分けているのか

 ここまでの選考過程で、学校側に親のステータスをアピールできるのは願書と体操服くらいだろう。一見、フェアにみえる選考過程だが、蓋をあけてみると入学する生徒の半分以上は、両親のどちらかが幼稚舎出身なのだという。

 それはなぜか。

 一説によると、願書の選別段階で「塾長箱」「幼稚舎箱」「塾員箱」「その他箱」が用意されており、箱担当の職員が願書の内容などについて関係者に事実確認を行ったりもするそうだ。

 そして冒頭の同窓会、塾長・舎長や関係者に直接ご挨拶済みの子どもたちは、考査でつけるゼッケンの番号で区別され、監督官の持つ評価表に既にチェックが入っているという。そのため、考査当日の結果で「大きく」左右されることがないと言われている。

 また、合格者のうち、普通部や中等部(いずれも慶應義塾の中学校)、塾高、志木高、湘南藤沢中等部・高等部、大学を卒業し、慶應義塾に貢献している卒業生や、政財界・スポーツ界からの強力なコネクションをもつ関係者がさらに残りの半分を占めているそうだ。

 つまり、“フリー枠”と呼ばれる、慶應OBでもなく、何の「コネ」もない生徒は男子が20人、女子が8人ほどしかその席が用意されていないというのが幼稚舎受験の実態だと考えられる──。

 次回は入学試験で行われる考査内容について詳しく見ていきたい。


<著者プロフィール>
いとうゆりこ◎お受験コンシェルジュ&戦略プランナー。港区で生まれ育ち半世紀を過ごしている。自身の経験から美容や健康・芸能・東京に関するマネー情報まで幅広い記事を各媒体で執筆中。