佐川の配達人が電話注文でローソン商品の買い物を代行

 佐伯さゆりさん(39)は、ローソン芦花公園店で『SGローソン マチの暮らしサポート』のPA(パーソナルアドバイザー)を務める。

 これは、SGホールディングスとローソンが、’15年から始めた共同事業。展開店舗の半径500メートル以内の佐川急便の宅配便(100サイズまで)を届ける業務に加え、電話注文で、ローソン店頭商品約3000アイテムをユーザーの自宅までPA自身が無料で届ける。ローソン店舗を起点にした自宅への配送プラス御用聞きサービスだ。

 現在は、東京都世田谷区内のローソン20店舗で試験的に展開している。

 今回はこのサービスの利用状況を知るために、PAの佐伯さんに密着した。

 午前、佐伯さんの携帯端末に注文の電話が次々に飛び込んできた。佐伯さんは端末を耳に当て、店舗から要領よく商品をカゴに入れていく。続けて商品を専用のボックスに入れて配達の準備。商品によっては保冷剤を仕込む。地図を見ながら効率よく回る順番も考えながらの作業だ。

台車には300kgまで積み込むことができるが、安定しないので積みすぎないように注意する。冷たいものを運ぶときは保冷剤も欠かせない。
台車には300kgまで積み込むことができるが、安定しないので積みすぎないように注意する。冷たいものを運ぶときは保冷剤も欠かせない。
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「うちの店舗の対象エリアは環状八号線の両側なので、何度も道路を渡らなくてもいいようにしないといけませんからね」(佐伯さん)

 荷物を運ぶのは、専用の台車か宅配ボックスを積んだ自転車だ。この日最初の配達は、環八を渡った先のエリア。歩道橋には車イス用のスロープが別についているが、ゆるやかながら長い坂道だ。佐伯さんはそのスロープを軽やかに上る。「私、ママさんバレーやってるから、この仕事はいいトレーニングなんですよ」

 到着したのは、古い団地で、その4階が利用者の住まい。もちろんエレベーターなどない。2リットルの水が6本入った段ボールとほかの商品が入ったレジ袋を持って佐伯さんが階段を上っていく。商品を届けると、そのまま佐川の荷物を何軒分か配達して回る。

「利用者さんは、60~70代の方が多いですね。でも、お子さんがいるお母さんやママ友のお茶会のケーキを届けることもあります。介護で買い物に行けない利用者さんも少なくないですよ」

 よく頼まれるのは、運ぶのが大変なお米や2リットルの水、ティッシュ、キッチンペーパーなどのかさばるもの。食品も人気があるという。

「ひとり暮らしの高齢者の方には、食べきりサイズのお惣菜、サバの塩焼きなどが人気です。グリーンスムージーもまとめて10本買われる方が多い。コロッケやから揚げも好まれます。注文を受けたら店に頼んで揚げたてを持って行くんです」

 利用者にも話を聞いてみた。マンションに単身で暮らす丸山利志子さん(80)はこの日、グリーンスムージーと鶏のから揚げを注文。

「今日はたまたま娘が遊びにきたものでね。ちょうど佐伯さんの話をしていたんです。本当に助かっていますよ。週に1回は必ず頼んでいますね」

 同じマンションに住む70代の女性も「佐伯さんが来るのが楽しみなの。助かっていますよ」と言いながら佐伯さんを見つめて涙ぐむのだった。

丸山さんと佐伯さん。ユニフォームは佐川とローソンを合わせたデザイン
丸山さんと佐伯さん。ユニフォームは佐川とローソンを合わせたデザイン

 高齢化社会においてまさに必要不可欠なサービス。しかし、ローソンの店舗数は全国で約1万3000だ。佐川の宅配の一部を扱うとはいえ、やはり無料配送サービスゆえに大きなビジネス展開は容易ではない。今後はエリア拡大に向け、優秀な配達員の確保が課題となる。