「よくインタビューなどで“ターニング・ポイントは?”って聞かれるんですけど、僕の答えは『サンセット大通り』。“いつかもう1度やりたい”という願いがやっと叶います」

 ミュージカルを中心に活躍する平方元基(34)さんが『サンセット大通り』でジョー役を演じたのは、5年前のこと。野心に燃える脚本家のジョーと、ハリウッドで忘れ去られた往年の大女優ノーマはいずれもWキャストだったが、組み合わせは固定。平方さんの相手役は常に安蘭けいさんだった。しかし再々演の今回は組み合わせが代わり、平方さんは濱田めぐみさんと組むことになる。

「ノーマを演じているとう子さんを見ていた」

複雑というか、寂しい気持ちはありますよ。とう子さん(安蘭さんの愛称)と一緒に作り上げたという自負がありますからね。前回の稽古は一筋縄ではいかなくて、忘れられない時間です。

 ジョーが翻弄されていくのと自分の混乱が重なって、自分が何をやっているのかわからなくなってしまった。ほぼ出ずっぱりだったこともあって、役のフラストレーションと、自分のフラストレーションと、それでも『やってやるぞ』という気持ちがリンクしたような感じだったんです」

 悩んであがいた結果、これまでにないノーマ&ジョーの関係性が生まれていた。

「ジョーというのは、夢や野心をすごく持っている男。その夢や野望に敗れ、こじらせたジョーは、ノーマに嫌気がさして出ていきます。なのに彼女が手首を切ったと知って戻ってきてしまう。

 それはなぜかと考えたとき、僕は憐れみとか同情だけだとは思えなかった。『ノーマが愛おしい』という気持ちがなければ成り立たないと思ったんです。ノーマを見ているようで、ノーマを演じているとう子さんを見ていた部分もあって、すごくラブストーリーの色が濃くなったと思う。

 利害関係というより共倒れみたいな(笑)。ふたりの関係性は、これまでに上演されたどのバージョンにもなかったんじゃないかな。そう思えた作品だったし、やり残したことがあるような気もしたから、またやりたかった。めぐさん(濱田さん)が相手になったら今度はどう感じるのか、それも楽しみです」