日本社会の現状に、「遅れてる! 海外ではありえない!」なんて目くじらを立てている人もいますが……。いえいえ、他の国の皆さんも基本は一緒! そんな、「衝撃」「笑える」「トホホ」がキーワードの世界の下世話なニュースを、Xで圧倒的な人気を誇る「May_Roma」(めいろま)こと谷本真由美さんに紹介していただきます。『ハリー・ポッター』シリーズの作者が込めた、本来の意味とはーー。
「家柄にはかなわない」
世界中で大人気の『ハリー・ポッター』シリーズ。主人公のハリーをはじめ、魅力的なキャラクターと魔法を駆使したバトルが、多くのファンを生んだわけですが、ここイギリスでは、ちょっと複雑な見方をされています。
著者であるJ.K.ローリングは、1児のシングルマザーとなり、生活保護を受けながら『ハリー・ポッター』を書き上げます。彼女は、公立学校から名門・エクセター大学に進学すると、そこで私立学校出身の裕福な学生たちに囲まれ、「劣等感」を強く感じました。大学卒業後、就職するもうまくいかず転職を繰り返し、私生活では闘病する母親を看病。さらには27歳で結婚するも夫のDVが原因で離婚を経験し、うつ病に。現実逃避の気持ちから『ハリー・ポッター』を書き始める─紆余曲折の人なんですね。
同作品には、ハーマイオニー・グレンジャーという女の子が登場します(映画版ではエマ・ワトソンが演じましたね)。彼女は魔法を使えない、普通の人間である両親のもとに生まれた魔女として描かれます。きまじめに努力する秀才として、仲間たちを手助けする。その姿は、大学時代、周囲から浮く存在であったにもかかわらず、懸命になじもうとしたJ.K.ローリング自身と重なるところがあります。

『ハリー・ポッター』の舞台となるホグワーツ魔法魔術学校は、イギリスの超有名私立高校であるイートン校やハロウ校といった寄宿制名門校を彷彿とさせ、彼女が“本当は自分も行きたかった”社会や生活への憧れが詰まっていると、イギリス人は感じるわけです。
ハーマイオニーに自分を重ねたJ.K.ローリングであれば、彼女がヒーローになるか、あるいはホグワーツの階級構造そのものを改革するといったシナリオを描いてもいいはず。しかし、両親が偉大な魔法使いであったというだけでちやほやされ、ホグワーツに招待された、いわば“選ばれし者”であるハリーが、ヒーローとなる。社会的弱者であり続けたJ.K.ローリングは、極めて現実的で「家柄にはかなわない」というメッセージを発しているとも受け取れるわけです。
『ハリー・ポッター』は、一見するとリベラルな作品に見えるかもしれません。ですが、実際にはイギリスの保守的な社会階層を表現している作品なんですね。そのため、イギリスの左派からは、否定的な見方をされている作品ということは、日本ではあまり知られていない事実なのです。
