12月1日をもって従来の紙やプラスチック製の健康保険証が廃止となり、翌2日からはマイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」へと移行した。
だが、75歳以上への資格確認書一斉交付や国保・後期高齢者での期限切れ保険証の容認など、昨年12月から設けられていた1年の移行期間の中でも、すでに方針が何度も変更に。
「マイナ保険証」の評価
また、移行に伴うデジタルツールの導入資金がない医師や、導入したものの認証エラーなどのトラブルが、全国保険医団体連合会の7割以上の医療機関で報告されているという。
東京都内で「保険証を元に戻せ」と集会が開かれたり、200万筆以上の「保険証廃止反対・保険証復活」を求める署名が国会議員に手渡されるなど、あまりいい評判が聞こえてこない。
「紙の保険証」廃止で現在、状況はどうなっているのか。WINDS行政書士事務所の行政書士で、マイナンバーカードに詳しい田中良秋さんに話を聞いた。
「確かに都市部の大病院などではすでに設備が整っていますが、かかりつけ医が小さな診療所でデジタル設備が整っておらず、今までずっと通っていたのにマイナ保険証が使えない場合、どこに通えばいいのかという話も聞きます」
マイナ保険証資格確認の義務づけは、医療機関にとって設備だけでなく運用面においても多大な負担となり、廃業に追い込まれた医療機関が多いとの報道も。
「特に地域医療の崩壊が大きく懸念されます」(田中さん、以下同)
高齢者にとっては顔認証システムの操作やカード発行・更新手続きの煩雑さ、紛失・盗難リスク、システムトラブル時の不安などハードルが高いように感じるマイナ保険証だが……。
「やり方がわからなくて手続きをしていないという高齢の方から、“紙の保険証はもう使えないの?”というお問い合わせもよくありましたが、11月に厚生労働省が“移行期の混乱を避けるため”と、すべての有効期限切れの保険証も条件つきながら来年3月末まで使用できる特別措置を打ち出しました。
現在は“今までの保険証”と、マイナンバーカードの健康保険証利用登録をしていない方すべてに無償、無申請で事前交付された“資格確認書”、この2つがあれば、来年3月末まで通常の自己負担で受診できるようになっています」
保険証の機能だけでなく、任意で運転免許証、数年先には、外国人の在留カードとの一体化やスマートフォンへの機能搭載の拡充など継続的に機能拡大、増加していく予定のマイナンバーカード。
紛失、盗難時などもろもろリスクも高いが、これからマイナンバーカードに情報が一本化される流れは避けられないのでは、と田中さん。
「デジタル化することで手続きが簡略化され、“この1枚”で済むことは高齢の方にも最終的にメリットは大きいのではないでしょうか」
まだまだ便利さと危うさで揺らぐマイナンバーカード、その“進化”はどこへ向かうのか─。
取材・文/住田幸子(マイナ保険証)











