もらった愛情を次の世代にバトンタッチ

 金に執着のない勝新太郎。飲んでいると人が増えて大人数になり、気づけば大所帯で飲み屋を移動していたのは有名な話です。知人が借金の申し込みに来た際、白紙の委任状にサインして京都の豪邸を失うはめになったこともあったとか。そして、自ら立ち上げた勝プロダクションでは、妥協のない映画作りを追求した結果、倒産。負債は12億円。この苦境の時期、アンディさんはマネージャーとしてオヤジのそばにいました。

「そりゃ大騒ぎだったよ。自分も父親にウソを言って、100万円をもらってきたりな。オヤジにはギャンブルのビギナーズラックだと言ったけど、ウソだとわかってただろうな(笑)。倒産直後、九州朝日放送の社長さんから電話があって、オヤジとスティービー・ワンダーの対談をやりたいって依頼があった。俺は“うちは倒産したんですけど知ってますか”と聞いたら、“御社の倒産は知っていますが、勝さんの芸が倒産したわけではありませんよね”と。あの言葉は忘れられないね」

 破天荒な生きざまながら多くの人に愛されたオヤジこと勝新太郎。

「オヤジはね、24時間365日、心身をすり減らして、俺たちを勝新太郎ワールドへ誘って楽しませてくれた。今は、俺がオヤジからもらったものを、あふれる愛情を、次の世代にバトンタッチしたいと思っています」

 現在、高校で英語講師として教鞭を執るアンディさん。生徒たちに、オヤジ流の愛情を型破りな教育で伝えているそうです。

『勝新秘録わが師、わがオヤジ勝新太郎』アンディ松本=著 1500円+税 イースト・プレス ※記事の中で画像をクリックするとamazonの紹介ページに移動します

■ライターは見た! 著者の素顔

 前の学校では、生徒に熱血指導をして辞めたこともあったと語るアンディさん。座頭市ばりに、現在の学校でも問題児にもひるまず、まっすぐに向き合います。

「この野郎ってんで何度も怒鳴りつけた生徒がさ、(契約更新時に)オレが辞めると思って手紙くれたんだよ」

 手紙には「アンディのこと忘れないよ」や「熱い言葉をうけて成長することができた」などのうれしい言葉が。その手紙は、宝物として今も大事に持って歩いているそうです。

取材・文/ガンガーラ田津美

<著者プロフィール>
あんでぃ・まつもと 1949年東京生まれ。大学卒業後、旅行会社に入社。外国人旅行部で得意な英語を生かし活躍。数年で退社。京都の高級クラブで偶然、勝新太郎と邂逅。それが機縁となり勝プロダクションに入社。マネージャーとして親子同然の生活を送る。現在は、英語非常勤講師として教鞭を執りながら、師・勝新太郎の教えを後世に伝えている。