植物に囲まれた空間で本と出会う「弥生坂 緑の本棚」

『弥生坂緑の本棚』の入り口は「緑」でいっぱい
『弥生坂緑の本棚』の入り口は「緑」でいっぱい
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 東京・根津駅の交差点から言問通りをあがった辺りの建物の前に、たくさんの植物と、古本が入った箱が置かれている。ここは、いったい何の店?

「ここは古本屋で、植物の販売所で、カフェでもあるんです」

 と笑うのは、店主・綱島則光さん。近くに“弥生坂”があり、緑と本を扱う店なので、この店名に決めた。

 両親が植物好きだった影響で、東京農大を卒業後、花屋さんに就職。そこで不要な本をくりぬいて植物のプランターにした商品に関わり、自分が本好きだったことを思い出した。その後、古書店やブックカフェの開業講座に参加し、古本屋を回り本を買い集めた。そんな中、根津のブックカフェが閉店することを知る。

「行ってみると、軒先が広くテラスもあって、ここなら植物も置けるかなと」

 ほかの物件は見ずに、ここに決めた。開店したのは2016年2月。いまは古本が5000冊以上ある。1冊1冊に丁寧にクリアブックカバーをかけている。ジャンルは幅広いが、特に植物や自然科学関係の本には力を入れている。

 植物本の専門家のトークイベントや、植物の絵を描いたブックカバーをつくるワークショップも行う。

 店の奥はカフェになっている。ゆっくり本を読んで過ごしてもらうために、閲覧用の本棚も置く。飲み物や食べ物のメニューも次第に増えている。多肉植物“グラパラリーフのメープルシロップ添え”などは、いかにもこの店らしい。

 開店から1年半、少しずつ常連客が増えてきた。「今後はイベントを企画したり、植物の展示会を開いたりしていきたいです」

 と最後に抱負を語った。

◎東京都文京区弥生2-17-12野津第二ビル1F 営業時間/13:00~21:00(日は~18:00) 定休日/月(木は不定休)

和室でなごめる古本と雑貨の店「甘夏書店」

『甘夏書店』では手ぬぐい、ブックカバーなどの雑貨も
『甘夏書店』では手ぬぐい、ブックカバーなどの雑貨も

 東京スカイツリーのお膝元、押上駅から約10分。水戸街道に出る角にある一軒家のカフェ『ikkA』に入り、靴を脱いで2階に上がると、6畳の和室が1500冊ほどの古本で埋まっている。友達の家に遊びに来たみたいだけど、ここは『甘夏書店』という本屋だった。

 店主の大山朱実さんは、2010年から向島で『ふるほん日和』というイベントを主催し、鳩の街商店街で共同店舗を持っていた。その後、イベントで『ikkA』の店主と知り合い、2014年4月にここに移った。

 絵本・児童書、食べ物の本や永井荷風ら向島に縁のある作家の本が並ぶ。畳に座って眺めるせいか、懐かしさを感じさせる本が多い。

 普段はこの部屋でこぢんまりと営業しているが、イベントとなると、襖を開けて奥の部屋も使うので、ずいぶん広い。

「私が企画を考えるのが好きなこともあって、イベントはいろいろやっていますね。月1回、カフェ主催の手作り品のマルシェに参加しています。星空ブックカフェと銘打って、この座敷にエアドームを置いて出張プラネタリウムを開いたことも(笑)

 ほかにも『本と遊ぶブックカバー・しおり展』『本と手ぬぐい2』などを開催。後者では、手ぬぐい作家がオリジナル手ぬぐいを出品し、素人参加の本イベント『一箱古本市』に参加。布、着物、落語など“手ぬぐい”からイメージされる本を並べた。本と雑貨が自然に結びついている。決して便利な場所にあるわけではないが、街歩きの途中に立ち寄るのにちょうどいい。本を眺めながら、なごめる店だ。

 大山さんがこの店にいるのは、月・金・土の12~18時。それ以外の時間は下のカフェで会計してもらう。このゆるやかさも、この場所に合っている。

◎東京都墨田区向島3-6-5 一軒家カフェikkA2階 営業時間/12:00~18:00 定休日/火、第1水