じっくり立ち寄りたい!魅惑の専門店

「猫と本とビール」が一緒にある空間「Cat's Meow Books」

『Cat's Meow Books』
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 三軒茶屋駅から徒歩8分ほど。東急世田谷線の太子堂駅近くの細い道を入ると、住宅街の奥にひっそりと『Cat's Meow Books』はある。猫の本を扱う店だから、わざわざ路地の奥を選んだのだろうか?

「いえ、たまたまですよ(笑)。自宅と店舗が一緒にできる物件を探して、ここを見つけたんです」

 と言うのは、安村正也さん。中古の一軒家を購入し、キレイに改築した。1階が店舗、2階が住居になっている。

 1階の前半分にはカフェのカウンターと新刊書がある。格子戸を開けて奥の部屋に入ると古書と新刊の棚が。棚に並ぶ本は、猫に関する本ばかり。テーブルに座って本を読んでいると猫が近寄ってきて、ちょこんとひざに座る。人懐っこい猫だ。

「この店は店長も店員も猫なんです。私たちは“本と猫の係”ですね(笑)」

 店長の三郎は、15年ほど前に母猫から育児放棄されたところを安村さんに保護された。

「ほかにも、もっと助けたかった猫がいます。それで自分なりに猫の保護活動に協力したいと思うようになりました」

 4匹の店員(鈴、読太、さつき、チョボ六)は、『保護猫カフェ』から里親が見つからない猫を引き取った。

「人に動じない性格の猫に看板猫になってもらおうと思いました」

 会社員として働きつつ、いつかは「好きな猫、本、ビールに囲まれて暮らしたい」と漠然と思っていたという安村さんだが、思ったより早く、その夢に着手することになった。

 ブックコーディネーター・内沼晋太郎さんが講師の『これからの本屋講座』を受講し、1年かけて準備。“猫と本と人がともに遊んでいる空間”をつくろうと猫が動き回れるキャットウォークを設置した。

「猫を飼っている方が設計したので、“猫ファースト”の方針を理解してくれました」

 設備に要する資金の一部は、ネットを通じて出資を募るクラウドファンディングで集めた。2017年8月8日オープン。この日は国際動物福祉基金などが定めた“世界猫の日”だ。棚の本は、1500冊の古書のほか、新刊も。“猫”のタイトルがずらりと並ぶ様子は壮観。

『Cat's Meow Books』にはタイトルが猫づくしの本棚も

「棚の本はジャンルで配列するのではなく、ゆるやかなストーリーを感じてもらえる並びにしています」

 確かに『猫返し神社』『ねこはどこへ行ったのか』『だれも猫には気づかない』ときて、内田百閒(ひゃっけん)が愛猫を探し回る名著『ノラや』と続く並びには思わずうなった。愛猫家ではない筆者にも、猫本の奥深さを教えてくれる棚なのだ。

 お客さんの7、8割は女性で、若いカップルも多い。「猫カフェのつもりでやってきたお客さんも、帰りには本を買ってくれるのがうれしいです。猫に出会いに来て、本にも出会ってもらいたいです。中には、猫には目もくれず本ばかり眺める人もいますよ(笑)」

 奥様が担当するカフェでは、コーヒーと生ビール、『水曜日のネコ』という名のホワイトエールビール(缶)が飲める。イベントとしては、猫本をテーマにしたビブリオバトルやパネル展などを企画している。

「猫と一緒にヨガをする“猫ヨガ”もやっています」(安村さん)

 純売り上げの10%は保護猫の活動団体に寄付。

「ここで本に出会った子どもが、大きくなってまた来てくれたらいいですね」と語る安村さんの表情は、最高に素敵だった。

◎東京都世田谷区若林1-6-15 営業時間/14:00~22:00 定休日/なし