何事も、とことんまでは追求しない

 では、なぜ、摂食障害の人は、そんな苦しい思いをしてまで、呪いにとらわれてしまうのでしょうか。

「世の中にはいろんな価値観がありますが、“女性はやせているほうが美しい”というひとつの価値観に絞り込むと、ほかのことを考えないでいいので、ある意味、楽なのです。なぜやせているのがいいのか、自分がどうしたら美しく見えるかは関係ない。体重だけを気にしていればいいのです。この呪いを解くのはとても難しいので、摂食障害の人は“やせているほうが美しい”という呪いを受け入れつつも、目的はやせることではなく、自分が美しくなることであって、やせることは美しくなる手段のひとつ、くらいに考え直す必要があります」

 この「ひとつの価値観にとらわれていると楽」という状態は、松居一代さんや泰葉さんの言動にも見られるそう。

「人は誰でも気持ちが追いつめられると、ひとつのことにこだわるようになります。松居さんの場合は“夫が浮気をしているに違いない。私はこんなに妻として完璧なのに許せない”、泰葉さんの場合は“私がいま不幸なのは元夫との結婚生活のトラウマのせい”となり、おふたりとも狭い世界の中だけで攻撃していればいいので楽なのでしょう。この、ひとつの価値観へのとらわれがプラスの方向に働くと、“この道ひとすじ”として、芸術家やアスリートなどが誕生する可能性もあります。誰もが何かの価値観にとらわれる可能性はありますが、間違った方向に進んで、生きづらくならないためには、何事もとことんまで追求しない、後にはひけないことはしないほうがいいと言えます」

「自称うつ」の人も呪いにかかっている

 また、最近多い「自称うつ」の患者さんは、「うまくいかないのはうつのせい」という呪いにかかっているそう。

「自称うつの患者さんは、世の中の気に食わないことや不安を全部、うつ病のせいにします。会社にも“うつです”というと病人として尊重され、周りも手を出せなくなります。今、うつはとても便利な言葉になっているのです。会社には行けないけれど、旅行には行けるなど、自称うつは、本来のうつ病とは異なり、本気で治そうとしない人がたくさんいます。病気から治ったら、今まで保留にしていた問題に結論を出さないといけないので、実は病気から抜け出したくないのです」

 一見、呪いにかかって苦しそうな状態に見える人も、実は、そこに安住しているという面もあるから驚きです。

「安住していても、呪いにかかっていると、人間関係が修復不可能になったり、仕事を辞めざるをえなくなったりと、失うものは小さくありません。実は呪いは、“ちょっと太った?”とか“ご主人、浮気してるんじゃないの?”といった、他者からのさりげないひと言によってインプットされることが多く、自信がなかった部分を“やっぱり”と思ってしまい、受け入れてしまうのです。

 呪いにかからないためには、“人は思いつきでしか物事を言わないもの。言葉を額面どおりに受け取る必要はまったくなし”と肝に銘じ、空気を読んで物事の裏も察するということが大事です