文部科学省も、各地の取り組みを注視している。

「正直、長野県の結果には驚いているんですよ。あんなに来るのかと。われわれもすごく勉強になったんですけど」

 と担当者も目を見張る。

LINE相談後、次なる課題

「今までSNSのいじめ相談に関する予算はなかったのですが、来年度予算として新規に9500万円ほど要求しています。導入する地区は限られてくると思いますが、いくつかの自治体にモデル的にやってもらって、データを蓄積したいという狙いはありますね」(同)

 その後、最適なツールに集約する動きにつながったり、相談技法や相談員の研修方法をどうするかといった問題に直面することになるが、試みは動きだしたばかり。

 心理カウンセラーで元スクールカウンセラーの鈴木雅幸さんは、

LINEでの相談は、どんどんやっていいと思います。ただ、その次にどうするかを考えないといけないですね。長野でも相談件数が増えましたが、その後いじめの解決までもっていけたのかが気になるところです。LINEを入り口に、解決につながるように考えたらいいと思います」

 と、若者が感じるLINEの気軽さに期待する。そして、相談の受け答えについて、

「相手が例えば“つらいんです”と言ってきたら“今つらいという状況に置かれているんですね”と次につながるような返しをするのがいいです。何がつらいのかわからないけど、つらいということを投げてくれたんだね、それを受け取ったとわかるように返してあげるのが大事です。

 いじめの根本解決には、大人が本気だという姿勢を見せることが大切なんですよ。大人であっても、すべてを失う覚悟で取り組む。その姿勢を子どもは見ていますからね」

 言葉だけのやりとりで、意思を伝え合うことは友達でも難しい。どんなやりとりをするのか、どんな解決法を提示できるのか、相談員のスキルアップはどうするのかなど、課題は山積だが、子どもたちが気軽に相談できるLINEにたどりついたことは明るい兆しかもしれない。