ようやく本場所の土俵で4横綱が揃う

 その一方で、21歳3か月の若さで、新たに小結に上がったのが阿武咲(おうのしょう)。小結とは、一番上のクラスである幕内の中でも、横綱を頂点に大関、関脇に次ぐ名誉ある地位。

 幕内に上がってから3場所連続で10勝5敗の好成績を収めてきた彼は、メラメラと炎のように立ち上る勝気をむき出しにして相手に向かっていく。その「勝ってやるぞ!」という相撲は、見る側をも「よっしゃあ!」とやる気にさせてくれる。

 176センチ、165キロの身体は、まるで勢いよく跳ねる大きなゴムまり、もしくは元気玉のようで「おすもうさんってまさにこういう感じだよね!」と嬉しくなる。

 6年生のときに、全日本小学生相撲優勝大会でチャンピオンになった彼は相撲エリートと言える。高校を1年で中退して阿武松(おうのまつ)部屋に入門し、相撲一筋に取り組んできた。

 インタビューでは硬派な受け答えっぷりが目立ち、今回の昇進でも「たくさんの横綱・大関陣に当たれるのは本当に楽しみ。強い方と相撲を取るのが好きです」なんて発言をしていたけど、この強気っぷりの根源は、元ヤンキーの魂が養ったという噂も。スー女たちからは「そこがまたかわいい!」と絶賛される阿武咲。21歳のスピーディーで炎メラメラの相撲を、ぜひ九州場所で見てみてください。

 そして九州場所の番付、一番上の東西に陣取る4人の横綱、日馬富士、白鵬、稀勢の里、鶴竜。この4人が揃って15日間相撲を取ったことがまだ1度もないが、どうやら九州場所で、遂に4人が最後まで戦うことになりそう。

 ここまで焦らされたら、期待も否応なく高まり、「もぉ~、この4人、ツンデレなの?」などと私の心はつぶやいている。休場が続いて「進退を賭ける」と親方に宣言されてる鶴竜はじめ、絶対に負けられない男たちの戦い、めちゃくちゃ期待してます! 

 九州場所は11月12日~26日。福岡国際センターで開かれる。

 ちなみに独特な相撲文字が味わい深い「番付表」は会場で一部50円で販売されているほか、通販でも買える。番付表の一番下には「千穐万歳大々叶(せんしゅうばんざいだいだいかのう)」という文字があり、これは末永い繁栄を祈る祝詞。

 このありがたい言葉が示すように、番付表そのものが実は「縁起物」。よく、番付表を貼ってるお店、あるでしょう? あれは相撲ファンというのもあるけど、縁起かつぎとして貼っているのだそう。ぜひ1枚手に入れ、部屋に貼って来年からの運気アップにつなげよう。


和田靜香(わだ・しずか)◎音楽/スー女コラムニスト。作詞家の湯川れい子のアシスタントを経てフリーの音楽ライターに。趣味の大相撲観戦やアルバイト迷走人生などに関するエッセイも多い。主な著書に『ワガママな病人vsつかえない医者』(文春文庫)、『おでんの汁にウツを沈めて〜44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー』(幻冬舎文庫)、『東京ロック・バー物語』『スー女のみかた』(シンコーミュージック・エンタテインメント)がある。ちなみに四股名は「和田翔龍(わだしょうりゅう)」。尊敬する“相撲の親方”である、元関脇・若翔洋さんから一文字もらった。