出産と子育てに理想を押し付けてくる人々

 コウノドリのもうひとつの特徴は、母になる人への「覚悟の教育」でもある。未受診妊婦や軽挙妄動の妊婦が案外登場する。人手不足の医療現場からすれば、ここは釘をさしておきたいところだろう。

 たとえば、第4話で木下優樹菜とパーマ大佐が演じた夫婦は、子どもをNICU(新生児集中治療室)に預けたまま、無断で1泊旅行に出かけてしまう。私は観ていたとき、一瞬「そりゃお母さんも息抜きしたいときもあるだろうなぁ…」と思ってしまった。素直に。

 が、やはり無責任という声も大きいし、新生児科医の坂口健太郎がビシッと苦言を呈してくれたおかげで、そりゃそうだなと思い直した。寝る間も惜しんで身を粉にして働く医者たちからすれば「ふざけんな」という話である。これは一般人よりも産科医や新生児科医がアラートを鳴らすところだろう。

 一方、迷信や都市伝説を信じきっている妊婦も登場する。「無痛分娩だと愛情がわかない」「帝王切開だと愛情がわかない」。ハイ、ここでアラート。そういう迷信を妊婦に吹き込んだ人物の存在が、気持ち悪いのである。

 こういうことを言ってくる人間は誰なのか、考えてしまう。たいていが自分の正義をふりかざす経験者だったり、根拠のないガセネタをまき散らす厄介な人ではないか。あるいは見ず知らずの赤の他人で、一生関わることのない人だったりしないか。

 劇中でもセリフにあったのが、「当事者じゃない人は理想を押し付けてくる」。押し付けられた理想にもがき苦しむ母がたくさん生まれていく様子が目に浮かぶ。ただでさえ、「女はこうあるべき」で苦しんでいるのに、さらに「母はこうあるべき」と重ねられる。

 つうか、私も当事者ではないので、本当の意味で妊婦や母になった人の気持ちを理解しているとは言い難い。また、妊娠・出産・子供に興味のない人や、過去につらい思いをしたことがある人がこのドラマを観たくない気持ちもよくわかる。

 経験はしていないけれど、肌で感じる&脳に伝わる「コレは嫌だなぁ」を今回きゅっとまとめてみました。


吉田潮(よしだ・うしお)◎コラムニスト 1972年生まれ、千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。テレビ『新・フジテレビ批評』(フジテレビ)のコメンテーターも務める。また、雑誌や新聞など連載を担当し、著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『TV大人の視聴』(講談社)ほか多数。新刊『産まないことは「逃げ」ですか?』に登場する姉は、イラストレーターの地獄カレー。公式サイト『吉田潮.com』http://yoshida-ushio.com/