現役ドライバーを続けるための支援

“いくつになっても、自由に移動できる、自立した生活をしてほしい”そんな思いで高齢者向けの『健康安全運転講座』に取り組む企業もある。自動メーカーの『ダイハツ工業株式会社』(以下、ダイハツ)だ。

 日本自動連盟(JAF)や、理学療法士、自治体などとタッグを組んだ地域密着型のイベント。会場は全国にあるダイハツの販売店で、近隣に住む高齢ドライバーが参加する。

 11月下旬、東広島市のダイハツ広島販売西条店に集まったのは67歳から89歳までの地域住民21名。他社ので会場を訪れる人や、「2度目なんです」と話すリピーターの姿も。まずは理学療法士による体力測定。握力や片足立ちで今の体力を知ることから。最高齢で杖をつきながら参加をしていた加東利子さん(83)は、日ごろから家で鍛えている、と自信をみせる。

「毎日、午前中は家の中で左右の足を交差させながら前に歩いたり階段で上り下りをしたりしてトレーニングをしているんです。1度、大腿骨を骨折してから娘には“運転やめたら?”と言われています。ですけど、がないと困るんです」

 加東さんはひとり暮らし。買い物をするにも近くに店がない。病院へは自分でを走らせなければならない。運転しやすい靴を普段用と別に用意するなどの努力をしているという。

 それでも、この日の体力測定は予想より低い結果に。「もっと頑張らなきゃね」

 と笑顔を見せた。

 続いて理学療法士のかけ声で全員が立ち上がり、体操が始まる。コグニサイズという認知症予防の体操を簡単にアレンジしたものや、ブレーキを踏み込む力をつけるための筋トレなど、いずれも家でできるもの。

 屋外ではJAFの職員による実講習が行われていた。みんな真剣な表情で「正しい運転姿勢」の話に耳を傾ける。実際に運転席に座り、死角に置かれた複数のコーンが見えないことを確認すると、「本当、見えない」と顔を見合わせた。