街に出ると、ひとりでカフェにいたり、食事をしている若者の多いこと多いこと。スタバなどのカフェでは、2人掛けのテーブルより、ひとりでくつろげるカウンター席が多くなった。若者たちはひとりの時間を楽しんでいるように見える。すごく、素敵な光景だ。

 今の時代は結婚しなくても、料理が苦手でも、コンビニや宅配の充実で、快適なひとり暮らしが可能だ。結婚も素敵だが、MUSTではなくなった。

 しかし、若いときのひとりと、老いてからのひとりは同じひとりでもまったくちがう。このことは、55歳ぐらいにならないとわからないだろう。なぜなら、初めて自分の身体に老いを目視したときにしかわからない感覚だからだ。

 だから、30代で老後が不安という人の不安は、もしかしたら将来、存在しないかもしれないのだ。あくまでも、30代という若さで想像するおとぎ話の世界、空想。そういう意味では、わたしも、80代の人から言わせれば、空想で話をしていることになる。

 ただ、70年ひとりで生きてきたので、その経験からの話はできる。先輩ヅラする気はないが、若いときに知っていたらよかったと思うことが多いので、少しでも若い人の役に立てればと、今回のシリーズを始めることにした。

 ひとりで生きていくときに、これから直面するだろう問題、ちょっと恐ろしい話、今から考えておくと生きることが楽しくなる話など、自由に書いていくつもりだ。

 例えば、ひとり身に襲いかかる身元保証人のこと、ひとり暮らしで病院にも行けないときの対処法、未婚女性が親の介護をさせられる問題。

 一方で、ひとりは自由を最大限に楽しめ、家族がいないのは悪いことではない。自立した女性は、別に可愛くなくても、何歳になっても結婚を申し込まれる事例もある。

 また、読者の方が不安に思うことなどがあれば、できる限りお答えするつもりでいる。

 わたしの夢は「ひとりでよかった!」と笑いながら死んでいける社会を作ること。皆さんと一緒に考え、ちょっとでも社会を変えることができたらうれしい。

<プロフィール>

松原惇子(まつばら・じゅんこ)

1947年、埼玉県生まれ。昭和女子大学卒業後、ニューヨーク市立クイーンズカレッジ大学院にてカウンセリングで修士課程修了。39歳のとき『女が家を買うとき』(文藝春秋)で作家デビュー。3作目の『クロワッサン症候群』はベストセラーとなり流行語に。一貫して「女性ひとりの生き方」をテーマに執筆、講演活動を行っている。NPO法人SSS(スリーエス)ネットワーク代表理事。著書に『「ひとりの老後」はこわくない』(PHP文庫)、『老後ひとりぼっち』(SB新書)など多数。