「優しいですし、何より人を大切にする。だから安心してお客さんを紹介できますよね」

 そう人柄に太鼓判を押すのは、「串焼呑屋 山蕗」の松永功店主(52)だ。春日部の活性化と被災地を支援する目的で市民活動団体を立ち上げた人物で、石澤さんも今では、同団体の役員を務める。

 春日部に溶け込みつつも、望郷の念は強まり、

「春日部も好きだけど、やっぱり浪江に戻りたい。浪江が一番なんです。いつかは浪江でもバーをやりたいですね」

 と希望を語る。

 避難指示解除から間もなく1年。今年2月には7年ぶりに地元の祭り「安波祭」が復活し、避難先から多くの町民が駆けつけた。

'09年8月に浪江町で行われた音楽イベントでギターを弾く石澤さん(右)

 震災前、町では毎年、音楽イベントが開催され、石澤さんはバンド仲間と参加していたという。

「毎週のように音楽仲間と飲んで、即興でライブをしたり楽しかったですね。今はみんなバラバラで、1年に1度会うか会わないかです。会えばみんな明るく振る舞っていますが、ふっと暗い表情になったりします。あの日常が一瞬にして奪われてしまったことが、悔しいですよ」

 そう吐露し、無念さを噛みしめる石澤さん。一緒にバーを切り盛りする優路さんは、昨年9月に結婚した。

「浪江は好きですし、いつかは帰りたいと思っています。嘆いても始まらない。一から新たな浪江を作っていくしかないと思っています」

 もう戻らない失われた故郷を、若い世代が取り戻すその日まで復興は続く。