出産する前に母親は高崎市役所に「お金がないので子どもを育てられない」という旨の相談をしていた
出産する前に母親は高崎市役所に「お金がないので子どもを育てられない」という旨の相談をしていた
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 祖母は孫の養育について

「養育する気はあるということでした」

 と市の担当者は確認している。そして続ける。

「実家のお母さんのところに行って育てるつもりだったと思うんですけど、まあ途中で本人の希望もあって、内縁の夫と育児をしていきたいとのことで、マンションで育児をしていたという状況だったと思います」

 1月24日が1か月健診の日だった。市の担当者が付き添ったのだが、

「子どもも順調に成長していて、母親も回復していました。1月には家庭訪問にも1回行っています。ただ1か月健診の付き添いを最後に、それ以降、母親と電話連絡がとれなくなりました」(市の担当者)

児相も市も対応が中途半端

 防音が行き届いたマンションの中で、一体どんな暮らしが営まれていたのか。母親も日常的に内縁の夫の暴力を受けていた、ということも明らかになっている。

 前出・山脇さんは、

「暴力も幼稚でプライドが高く、社会的適応性が低い人にありがちです。俺はなんでもできるんだ、みたいな子どもじみた万能感があっても実際仕事をするとうまくいかない。

 女性側も怖い。“働いてよ”と言えば、“うるせぇ”と暴力をふるわれる。だから次第に言わなくなり、機嫌をとるようになる。自分への暴力も怖いし、子どもへの暴力も怖くて、なにも言えなくなる」

 と負の連鎖を解説する。

 児相、市役所、母親と祖母が、赤ちゃんの将来を心配したが、そこに森田容疑者と森田容疑者の身内は登場しない。森田容疑者が育児の分担をすることは考えにくく、つぐみちゃんの母親が、金銭的にも肉体的にもきつい状況下で、ワンオペ育児に忙殺されていたのが真相のようだ。

 取材の過程で浮かんできたのは、児相も市も一家への踏み込み方がイマイチという中途半端感。その判断が最悪を招いてしまった。市は、

「子どもを預けたいと言った時点で、お母さんとしてもかなり厳しい状態だったのかなと思います。施設に入れるのがよいというわけではないですが、子どもと母の様態をよく確認しつつ、早い時点で児相に受け入れてもらうなどのことは考えていかないといけないかもしれませんね」

 と反省を口にするが……。大人たちの不作為が、つぐみちゃんへの虐待を生んだ。